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□ジャックスワーク
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「ジャック、クッキーを持て」
「はいっ、キング、只今!」
 遅いぞ、と怒声が飛ぶ前に彼の口へクッキーを放り込んで、もう少ししたら飲み物を持てとか言うだろうなと思ったから紅茶の準備を始めた。

 キャラなりが出来るジョーカーとクイーンと、彼女らと仲が良くデスクワークの嫌いなエースが3人共ロイヤルガーデンにいないのはあまり珍しいことではない。
 その都度俺にだけ見せるキングの一面。あ、俺だけじゃないな。前ジャックスもそうだったらしいから。
「ジャック! 昨日回収したアンケートがないぞ!!」
「え、少々お待ちを・・・!」
 慌てて取って返しファイルを漁って、本来納められるべきでない場所に挟まった目的の物を探し当てた。5年生のだから多分エースのミスだ。
「全く、手間取らせおって」
「はぁ・・・、申し訳ありません」
 別に、この程度の労働や理不尽は苦ではないし腹も立たない。姉さんのそれと大差ないし、そもそも誰かに従うことをさして苦には感じない。
 ただ、ジョーカーはキングを好きで、そしてこれを知らないんだよなぁと思うと少し複雑な気分になる。

 これをジョーカーに告げ口すれば、彼女が彼を見る目も少しは変わって、間接的に俺も少しは望みが持てるのではないかと思ったことが何度もある。
 けれどその度、本当はこれほど甘えたで自分本位で弱い一面を、彼女の前では綻びひとつ見せず隠し通す彼は、矢張り俺などより余程強いのだなぁと思うのだ。

 俺にも、隠していることがある。キングに。ジョーカーに。
 正直裏切りは時間の問題なのだということはもう分かっている。ああ初めからスパイだったのだから、それはガーディアンの皆を、ではなく。
 多分、イースターを、姉さんを、近く、裏切るだろうと。
 その時に、俺一人が姉さんに責められ罵られて、山口へ送り返されて、姉さんの計画は失敗して、ガーディアンの皆は何も知らないままなら、良いなと思う。
 ジョーカーは、俺の裏切りも、寝返りも、この想いも、何も知らないままで、俺のこと何か忘れてくれれば、良い。

 そして、キングがいつか本当に強い人になって、ジョーカーを支え、ジョーカーに支えられて、そうして2人幸せになったことを、いつか風の噂に知ることが出来たら良いなと思う。
 その時に、キングもジョーカーも、俺のことなど思い出す暇もなければ良いなと思う。
 俺がジョーカーの隣に立っているのは、とても幸福だけれど不本意なことだ。そこは今既に俺の居場所ではない。
 それを悲しいとは思わない。少しだけ寂しいけれど。

 俺は別に俺がジョーカーを幸せにしたい訳ではない。ただジョーカーに幸せになって欲しいだけだ。


 好きでやってた空海と違って、三条君が唯世君に従う理由なんかないのになー。
 取り敢えずこんな10歳は嫌です(自分で書いといて)。
 そんな訳で三条君も唯あむ派。これで幾斗とくっついたら揉めるぞー・・・。

259 くらいくらい、でもひかりはいらない

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