遊戯王

□ヒロイン志望ではないから
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 ゆるりと壁の時計を確認すると、もう9時を回ろうとしていた。太陽が高い。
 いつもなら分刻みのスケジュールに追われている時間。
 僕はどうしてここにいる?
 きつく目を閉じる。出来ることなら眠ってしまいたい。

「ヒーローの苦しみと憎しみ・・・か」
 ずっとベッドにいたからだろうか。どこか気だるい。
 動きたくない、というか、動く理由を失ってしまったような。

『ヒーローが戦わなければならない宿命は、決して楽しいものなんかじゃない。ヒーローの背負った十字架の重さが、その苦しみと憎しみが、お前に分かるか!』

 酷く昔の台詞が蘇った。
 それは奇しくも言った通り。
 そして、それを本当に背負ったのは僕ではなかった。
 君は、あの時だって僕なんかよりずっとそれを分かっていたのだろう?

 今の異常は僕にだって分かる。
 今まであらゆる瞬間に隣にいたような気がするたくさんの誰かを、
 いつの間にか思い出せなくなっている。

 誰かは分からない。
 分からないからこそ、その欠けは大きく深く痛んだ。
 次は自分かも知れない焦りと恐怖も。

 気持ちと裏腹にベッドに横たわったまま、視線だけを動かして空に向けた。
 すこし前からざわめき続ける胸に、結局眠れないまま夜が明けて。
 太陽の光はどこかよそよそしい。

 僕は既に異物なのだろうか。
 痛みさえ手の平を滑っていくような。

 それでも、

 それでも、まだ、彼のことを覚えているから。

 ただ怯えているのは悔しい。
 けれどもう僕には届かないから、

 せめて祈ろう。
 優しい運命が君を導くよう、
 そうでないなら、今まで君がそうしてきたように、君がそれを打ち破ることを。

「・・・ムカつくんだよ」

 いつだって当然のように立ち向かうお前が。
 それで人知れず傷付いているお前が。
 なのにそれを忘れたみたいに、僕に笑ったり謝ったりするお前が。

 ヒーローにただ焦がれるのもまた、少しも楽しくなんかない。


 57話見ながら172話前後設定エド。
 もう消えてるかもですが何となく。今後出番ナシはちょっとなぁと思いつつこっちにまでスポット当ててこれ以上の急展開もキツイっていう微妙な立ち位置。
 タイトル、「ヒーロー」という言葉を無駄に使ったので「ヒロイン」が良かったんです。

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