遊戯王

□しゃらしゃらり
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 じゃら、と音がした。
 俺の首に繋がっているのだろうかと思った。

 どこか纏まらない思考で、緩慢な動作で、それでも音がしたそちらを振り返ると、見慣れない青年が水道に鎖を掛けていた。
 少し前に何処だったかの水道管が破損して、アカデミアで一部断水していると聞いたから恐らくはその関連だろう。
 侵入を防ぐ役には立たないだろうそれは、使用禁止の目印だ。

 他の場所に向かうべく工具箱を片手に立ちあがった男の背中をやはりぼうっと見送って、
 何となく、そう本当に何たる意図もなくその鎖に歩み寄って、手を触れた。

 しゃら、り、

 硬く冷たい、けれども流動的な、
 音、形。
 無機質な色。

 差し込む夕日を受けて、赤色の反射。

「万丈目?」

 背後から声。
 けれど振り向かなかった。

 時間なんて、幾らあっても足りない。
 でも、覚悟と諦めでもって、それに換えよう。

 いつかはいつかだ。
 不安定で不確かでけれどそれは確実に訪れるいつか。
 俺はそれを待っている永遠に来ないようにと呪いながらそれでも待っている。
 貴様が俺の手を離れ俺ではない誰かをきちんと見つけそして本当に一人でなくなるその日を焦がれる程に祈っている。

 十代の手が、手に触れた。

 俺は人の体温というものがどうにも苦手だ。
 長く、触れあってこなかった所為か。
 俺の体温が釣り合わない所為か。
 火傷をしそうで、痛い。

 そっと手を握り返す。
 しゃらり、引かれた十代の手が鎖を押した。

「冷たい」

 誰が、何が。
 それはお前だろう。
 こんなにも熱いその裏側で。

 こいつなら平気とか、そういう訳じゃない。
 ただ、耐えて、そうしないと、
 たった一度振り払ったら、俺は二度とその手を掴めなくなるかも知れないんだ。

 だって貴様は俺を探しに来ないし、
 俺が貴様を探し当てる日などそれこそ未来永劫訪れないのだろう。

 近く、自由になれる。
 俺も、お前も。

 さぁ、呼んでいる。

「帰ろ? 万丈目」
「・・・あぁ」

 引かれるまま歩き出す。

 しゃらり、

 貴様が振り払わないその間は、とにかく離さないから、
 ひとりは嫌だと泣くくらいなら、どうか今はこの鎖を放さないで。


 じょめ消滅に寄せて十万。うちではよくある感じの。
 ラブラブって本当難易度高いですね(別に今回は目指してすらないですが)。
 ちなみに私はマンテルかダブルリンクと呼ばれる型の鎖が好きです(分かるか)。

31 繋ぎ止めておいて、鎖で (Short message)

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