遊戯王

□斎王兄妹
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「美寿知、どこへ行くのだ?」
 いつものようにカーテンを開け窓を開け、それからいつも暫く隣に座って話をする妹が部屋を出ようとするのを見て、琢磨が声をかけた。

「あ・・・えっと、今日は2月14日でしょう?」
「・・・そう、だったかな」
 記憶を辿るように額に手を当てる。こんなところに一日中いるのだから無理もない。
 それでも兄は何一つ不満を言わないが。

「私も今朝まで忘れていて、なのでこれから作ろうかと」
 手に抱えていた白いシンプルなエプロンを広げて見せる。
「・・・何を?」
「チョコレートです。今日はバレンタインですから」
 言うと、兄は今思い至ったという顔をして、それから誰に宛てるのか知らないが、と前置きした。
 外出はまだ難しいだろう。郵送なら届けを出さなければ、
 真面目な顔をする兄に、つい苦笑する。

「兄さんに、ですよ」
「私?」
「ええ、意中の人に、というのが基本みたいだけど、お世話になった方に感謝を込めて贈るというのも今は一般的だから」
 琢磨は、暫く黙っていたが、すっと真っ直ぐに美寿知を見上げて、

「私も、お前には感謝している」
 改まって言う兄に、美寿知はくすくすと笑って、

「なら、一緒に作りましょうか?」
「ああ、それがいい」

 二人、微笑んで。

 美寿知はエプロンを片手に抱え直す。
 差し出した手を、琢磨が取った。

「そうだ。エドにも送ろうか」
「なら、十代にも」

 少し遅れてしまうだろうけど、と笑う。
 二人は緩やかな足取りで台所へ消えて行った。


 どこまでバカップル何だろうこの二人(えー)。
 いや、恋愛感情じゃないと思いますけど。
 ていうかこれより先に書くべき人がいると思う私。

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