遊戯王

□守人
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「ユベル?」

 (戦争が落ち着いている時は)日課になっている午後の散歩の最中、目に見えて足取りの重いユベルを振り返った。
「どうかした?」
 首を傾げる僕に、ユベルは、すいません、心配かけましたねと苦笑した。
 別に心配した訳じゃないけど、と思いつつ気にはなるので重ねて問う。

「何かあったの? あー、そう言えば昨日呼ばれてたよね。父様に何か言われた?」
「いえ、とんでもない。・・・ですが、あの、その時に王子が近々前線に出ると聞いたので」
 眉根を寄せるユベルに、ようやく合点がいって僕は笑った。
「心配してくれたんだ? 大丈夫だよ。ちょっと顔出しするだけで戦う訳じゃないから」
 そもそも僕は戦争をする為の王子ではないらしいから。
 まだ知らないけれど、僕は何かしらの『力』と『使命』を負っているとは常々聞かされている。
 それを守るのがユベルなのだとも。

「それにユベルも来てくれるんでしょ?」
 ユベルは当然です! と声を荒げ、僕が少し驚いた顔をするとはっとしたように俯いた。
「すいません、つい・・・。けど、もし守れなかったらと思うと・・・」
 ボク一人生き残って、一体何の意味があるのか。
 小さく肩を震わせたユベルは、いつもよりずっと小さく頼りなく見えた。

「大丈夫だよ」
 言うと、おそるおそるといった感じで顔を上げる。
「ユベルの使命は僕を守ることでしょう? 王子を守る為にユベルは存在するんだ。もしもそれが駄目だったら王宮直々にお触れが出てにあっという間に殺されちゃうよ」
 肩を竦めて、さも日常会話のようなふりをしてそんな言葉をかけてやった。この国では指名と名の付くものは絶対だ。色々な意味で。
 どう反応するかと女の子の癖に背の高いユベルを見上げるように見詰めていたら、ユベルは驚いたように目を見開いて、

「うん、そうだね。死ぬ時は一緒だよね!」
 出会ったその時のような無邪気な表情で、心底嬉しそうに言って僕の手を取った。

 ・・・今更、だけれど。
 こいつは、普通とは少し違うのではないだろうか。

「ありがとう、王子」
 多分心からの裏表のないその言葉はだから裏も表も真っ白なんだろうと思って僕は何も答えなかった。
 ていうか死ぬ時は一緒って、別に君が死んだって僕は死なないと思うけど。

「さぁ帰りましょう」
 すっかりいつもの口調で、けれども少しうわついた空気を引き摺って僕の手を引くユベルに、
「ん・・・。うん。そうだね」
 僕は曖昧な表情で頷いて手を引かれるまま歩き出した。


 前世だろうが一人称僕だろうがキノコだろうがやっぱり兄貴は兄貴だしユベたんはユベたん。昔街で5,6歳のユベルを王子が見つけて拾ってきたとかいう設定があったりなかったり。
 ちょっとユベたんが怖くなってきた王子の話。大丈夫お前も普通じゃないから(・・・)。
 久々に普通に性格最悪な兄貴書けて満足。どうも前世ユベルは敬語喋りがデフォになる。

128 安心して永遠に眠らせてあげるよ(Short message)

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