□アンシンメトリー
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「綱吉君って面喰いなんですか?」
「はぁ?」
 俺の首へ手を回しながら(未だに締められるんじゃなかろうかと思ってしまう)、骸が突然そんなことを言い出した。

「何で急に」
「だって、君の周りの人皆綺麗じゃないですか」
「・・・俺が集めた訳じゃないから」
 ていうか自画自賛かよ、と言おうとしてやめた(果てしなく今更だ)。

「獄寺君もそうですし、雲雀君も、君の愛しい彼女も」
「それってクロームのこと? それとも京子ちゃん?」
「前半は聞き捨てなりませんよ。確かにクロームは綺麗ですが」
「えー・・・、京子ちゃんもだけど、俺は可愛いと思うけどね」

 一度言葉を止めて、骸の腕をひき剥がすと話を遡る。
「獄寺君はまぁ、綺麗だよね。流石クウォーター、っていうのは失礼かもだけど」
「君はああいう斜に構えた感じは好きではなさそうですが」
「うん。中学の時はね。でも、獄寺君はほら、俺の前じゃアレだし」
「あぁ、そうですね」
「雲雀さん・・・は、目、閉じてたら人形みたく見えるんだよね」
「へぇ」
 見たことがないから分かりません、と言った(初対面の時も彼は結局気絶はしなかったらしい)。

「ほら、雲雀さんって本当、綺麗とか突き抜けて整ってるじゃない?」
 おかしいくらい色白いし。と、続けた俺は、少なくとも雲雀さんを称賛する気はないようだと再確認。
「・・・まぁ、彼は確かに整ってるし、左右対称では、ありますけど」
 小さく、それでも隠す気は恐らくないなと窺える音量で、僕の方が、と続けるのが聞こえた。
「でも、」
 それは無視して続けると、骸は微かに不満げな表情で俺を見上げる(何て言って欲しいんだお前)。
「お前はさ、目、開けてた方が人形っぽいよ」

「それ、褒めてるんですか?」
「さぁ・・・。どっちかといえば貶してる、かな」
 目を細めた骸に答えてやると、今度ははっきりと不機嫌になって口を閉じた。
「俺はさ、多分あんまり外見には拘らない方だけど、」
 そりゃ、敢えて言うならふわふわきらきらした子が好きだけど(具体例もある所で)。
「あんまり『完璧!』って感じがするのは、好きじゃないかもなぁ」
 それこそ、具体例もあるところで。

「まぁ、それは目に見える異質もそうだけど」
 俺にとっては『完璧』も一つの異質で、だから骸と雲雀さんの外見に対する評価は大体同じだ。
 昔は身長差が比較的少ない雲雀さんの方にまだ親しみがあったけれど、雲雀さんも今では追いつきはしないものの骸と大差ない長身の持ち主になったし、何より俺が伸びて気にならなくなったのでそれもあまり関係ない。
「お前はさ、少なくとも左右対称じゃあ、ないよね」
 はっきりと左右を違える、その色。

「お嫌いですか」
 淡々と問う骸に、一応先に外見には拘らないと言っておいたのになぁと思いつつ、
「うん。俺は別に完璧なのは好きじゃないし、左右対称とか関係なく、どっちの瞳も綺麗だとは、思うんだけどね」
 言いながら、骸の両頬へ手を添えて、ぐっと固定し覗き込むように。
 俺の右目には藍、左目には赤。
 近過ぎてぼやける、それでも何故だかやたらと澄んだ色の瞳が映り込んで、

「その右目を好きだとは、思えないなぁ」
 血にまみれた真っ赤な目で、痛みと引き換えにした真っ紅な目で、
 見据えるのはお前の為と、俺の為の未来。

「いっそそれ、潰せればいいんだけどね」
 これは、酷い。
 自分でもそう思いながら、それでも抑えず吐き出せば、
「僕も心底そう思ってますよ。出来るものならね」
 と、溜息すら交えてあっさりと返された。
「・・・だよね」

 力、なんて、何かを守る為にならないなら心の底から欲しくない。


 超直感も、六道輪廻も、必要ないなら欲しくないのだけれど。
 でもムックは特に、幻覚が駄目になるとクロームたんが死に直行なので絶対的に必要。
 つー様とムックは、マフィアが嫌いで、でもそこにいる人が大好きで、という矛盾においてとても気が合うのでたまに仲良しです(笑)。

141 その綺麗な瞳、潰していい? (Short message)

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