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□母国語
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彼の母国語はイタリア語だと知って、
私は日本語の勉強を始めた。
7歳になって直ぐ、彼はマフィアになる為イタリアへ行くと言った。
11歳になったフゥ太さんと一緒に。
私と彼は何時の間にかこの沢田家のお世話になっていて、だから何時の間にか一緒に暮らしていた。
私が転がり込んだこの家の先客だった彼は、内容は滅茶苦茶ながらも日本語でしか話さなかったので、私はてっきり彼を日本人なのだと思っていた。
それこそ、彼がイタリアへ行くのだと告げるその日まで。
再会の日が決まった時、彼と私は9歳で、その少し前に彼はボンゴレの10代目雷の守護者になるのだと下手な字で手紙を寄越してきた。
手紙を受け取ったその日の内に私は心を決め荷造りをして翌日には中国へ渡り、お師匠様に頭を下げて、殺し屋を捨て、母国を捨てた。
彼がそこへ踏み込むというなら私はいつでも『こちら』に居よう。
貴方が本当に望むものを選べるように。
私は幼くして殺し屋で、初めて殺した時を正直なところ全く覚えていない。相手にしてみれば堪ったものではないのだろうが、罪悪感どころか理性もロクにない中の仕事であった。
罪悪感も理性もない中での仕事は、今になって酷く私の神経を苛んで、仕事を辞めていたこの4年間に私は随分弱くなったのだと気付く。
少しだけ幸せだった。
その上で、全てに対して後悔はない。
国籍すら持たない私に高校は難しいから、どこでもいいから大学へ行こうと目標を立ててバイトと勉強を始めた。
日本語だけはこの2年猛勉強したお陰でほぼ身に付いていたので、ランボへ日本語で手紙の返事をしたためつつ、これから彼が踏み込む地獄を既に知っていて引き留めない私はもしかして最低なんじゃないかと思う。
けれども沢田さんの決めたことならきっとそれは不可避なのだとも。
彼は、多分私が思うより余程強い。
だからきっとあの地獄にも耐えられるのだろう。だからこそ、私はもう殺さない。
私の為と、彼の為に。
私も貴方も深みにはまって、戻れなくなることがないように。
貴方が私を見て、こちらを忘れず、見失わぬように。
そして、
いつかこちらへ戻りたい日が来た時は、
私は身代わりになってでも貴方をそこから引きずり出そう。
貴方の為に足を洗ったのだもの。貴方の為に再び手を汚すことをどうして躊躇おうか。
イタリア語なんて覚えてやらないよ。
覚える必要もないんだから。
だって、彼はたとえ2年程しか過ごしていなかったとしても、彼の場所は日本で、私の場所も日本だもの。
「ねえ、早く帰って来なさいよ」
私、一番に「おかえり」を覚えたんだから。
+
やっと書けた念願のランピン。基本両想いですが想いの強さはランボ←イーピンです。
イーピンはヒロインだったら苦手なタイプですが、サブキャラとしてはとても愛しいです。
しかしこのイーピン9歳設定なのに物凄い達観ぷりですね。
186 その汚れまみれた手は何の為にある?(Short message)