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□人の好意は受けるもの
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「あ、旦那、ねぇ昼って食っちまいやした?」
「沖田君・・・。や、今日はまだだけど」
 時刻は正午を過ぎて30分程。微妙なところだと思ったが、勝った(何にだ)と胸中でガッツポーズ。
 ねえ、じゃあ、

「一緒に、飯行きやせん?」

 見回りの最中に貴方を見かけ、パトカーだったら惜しいなぁと思いつつ一声かけるくらいしか出来ないが、今日は運良く歩き。更に都合のいいことに土方さんは丁度別行動。
 無感動に俺を見下ろし、外で食う程金ねんだよ、と言う旦那に、いいですよ、奢りまさ、と言う。
 そう、悪いね。言いながらファミレスへ向かうのは精々月に2、3度程。
 先のやり取りはもはや決まり文句と化しつつあり、けれど一応口に出す。

 旦那と差し向かいで飯を食うのは月に2、3度(出来れば隣へ座りたいが、向かいが空いているのは不自然だし、だからといって他の奴を交えたのでは意味がない)。
 そこそこの給料を得ている俺には大した金額ではない(ホテルへ入る方が余程かかる)のだけれど、昼時に出くわす度に必ず飯に誘う俺を、旦那は2回に一度くらいは断った。

 つまり、懐が寂しい時でないと首を縦には振ってくれない。
 まぁそれでも旦那の為だからと、快く俺は奢っていた訳だ(ヒモでもいい。笑うなら笑え)。
 ここ最近はそれなりの稼ぎがあったのか、それともパチンコの調子でも良かったのか、すげー久しぶりに旦那と一緒に飯を食って言うまでもなく俺が払って、こうやって奢ってる間にも俺には月給が発生してるんだから笑えるなぁとか、
 定食の後にケーキとパフェを平らげる旦那を見ながら思った。

 旦那と別れてからも浮ついたままの気分でいい加減に見回りしていたら、旦那とチャイナが連れ立って歩いているのを見つけた。1日に2度も拝めるなんて珍しい。
 殆ど道の端と端だったから、向こうは俺に気付いていないようだった。

「お腹空いたヨー。今日は銀ちゃんが晩御飯当番ネ」
「んー。銀さん昼にたらふく食ったからあんま作る気しねー・・・」
 ふいに話題に出されてどきりとした(馬鹿か)。
「またかヨてめー! 銀ちゃんばっかり外で食べてずるいアル!!」
 繰り出されたチャイナの蹴りを軽くかわして、ぽんとその頭を押さえた。
「いーじゃねーの。その分おめーらの腹に入る量が増えんだから」
 つかおめーが食う量減らせばこんな貧窮しないで済むんだけどね。
 歩きながら言う声は雑踏に紛れてもおかしくねーのに何故だか聞き取れて(恋の力ってか)。

 ・・・結局、何でぃ。俺ぁチャイナと眼鏡に食わす為に旦那に奢ってんのかィ。

「旦那ぁ」
「あ? あー・・・、沖田君」
「何の用ヨ」
 声をかけるなりチャイナの威嚇が混じり、別に用はねぇけど、呟いて旦那を見上げる。
 瞬間バツが悪そうに眉を寄せた旦那に、俺の心はどんだけ筒抜けなのかと思う。
「悪ぃけど、今日銀さん夕食当番何だわ、また今度でいい?」
 それとなく、次回詫びるから今は見逃してくれと言う。

 ・・・ちげーだろ。
 そういうとこが嫌何だ。駄目何だ。
 旦那は悪くねぇだろぃ。そういうことでいいじゃねぇか。
 俺と一緒に飯食うのが楽しいから、ってことにしちゃ、いけねぇんですかぃ?

「・・・チャイナぁ、旦那が次金が入ったらおめーらにも好きな物食わしてやるって言ってたぜぃ」
「え?」
「まじでか! 銀ちゃん大好きアル!!」
「は、や、ちょ、待って待って沖田君それ幻聴とかやばいんじゃないの君ぃいいい!!」
 俺を追い掛けようとした旦那は、背後から抱き付いたチャイナに足止めを食らって、
 それでも声に怒気が混じらないのは俺が怒っても仕方ないと思ってるからだろう。
 何でだよ。俺が勝手に奢ってただけだろィ。だって、俺、旦那が好きなんだから。何でそこから認めてくれない。
 ・・・旦那何て、チャイナに食い潰されちまえばいいんでぃ。

 そんでもって、早くカラの財布抱えて俺んとこへ来なせぇよ!


 相変わらず報われない沖田。
 普段積極的に奢られないのは銀さんの優しさですが、新八や神楽の為にも懐が寂しいと奢って貰う。

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