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□小ネタ集
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「最近、土方さん来やせんねぇ」
「ここはあっちーからな・・・。つか、沖田君よく平気だね」
 旦那は麦茶にごろごろと氷を放り込み、ついでにと俺の分も用意してくれた。
 いつもなら程々で連れ戻しに来る土方さんはここ最近来ないし、チャイナと眼鏡は使いに行ったきり戻らない。恐らく出先の店で涼んでいるのだろう。あぁ何て好都合!有難う猛暑!!

「へい。俺ね、あんまり暑さが分かんねーんでさ」
「ふーん?」
「いっぺん医者にも見て貰ったんですけど、暑さに関しては皮膚感覚が鈍いみてぇで。汗もかかねぇもんだから一応気ぃ使わねーとぶっ倒れかねねーんですけどね」
 エアコン漬けの子供によくある症状らしいが、自分はそうではないので単に生まれ付きの体質なのだろう。思いながら麦茶を煽るとからりと氷が鳴った。ひとつ口に含む。

「じゃあそれ脱いだ方がいいんじゃね?」
 見てるだけで暑い、と旦那が隊服の上着を指した。
「旦那が脱がしてくれたら今日は脱いだまま帰りやす」
「はぁ?」
 旦那に言われるまでもなくこんなものは脱いでおいた方がいい。唯でさえ黒い服は暑いのだ。
 ただ、土方さんがこれを片手に持って呻いている時に、隣で涼しい顔をしてやるのが良い。
 そう言うと、旦那は今更だけど性格悪いなぁお前、と苦笑してから俺の上着を脱がして、少し考えてからベストの前も開く。
 ふわりと白いスカーフが広がった。

「・・・ねー、旦那ぁ」
「あんだよ」
「このまま全部脱がしてくれてもいいんですぜ?」
 言えばぴたと手を止めた旦那は思い切り顔を顰め、
「やだよこのクソ暑ぃのに。ほれさっさと帰れガキが」
 即答して空になったグラスを取り上げるといそいそと扇風機の前へ戻ってしまった。

 前言撤回。熱さのバカヤロー。


 前拍手お礼に置いてたやつ。
 もう沖田この扱いで確定してる。何でだろうそれなりに出来た子だとは思ってるのに。
 土方さんが上着脱いで暑い暑い呻いてる時に隊服着込んで汗一つかいてない沖田に(私が)ちょっと引いて、体質っていうか障害とか何だろうかって思って書いてみた。

051:麦茶(沖田総悟)






「あ」
 病院の待合室。急患などもおらず、さして深刻でもないだろう症状で通院している患者達の雰囲気は寧ろ和やかで。
 そんな中、鉢合わせした2人が同時に呟いた。

「チャイナおめー、もうギプス取れたんかよ」
 未だ固定されたまま動かない左足と、座した傍らの松葉杖を忌々しく思いながら総悟が言った。
「うん。もう来なくて良いって言われたヨ」
 どこか勝ち誇ったように、包帯一つない腕を露出した神楽は答える。戦闘民族と謳われるだけあって、夜兎族の治癒のスピードは地球人の比ではない。
 元々総悟の方がやや重症だったのもあって、完治の時期には随分な差が出たようだ。

「・・・んなら、手はもう使えんだな」
 丁度良いや。総悟はそう言って、松葉杖片手に立ち上がる。
「何ヨ?」
「あン時」
「・・・」
「お前は手負いだったのに、俺は手を出しちまった」
 嫁入りと称して半ば連れ去られた妙を奪還するべく乗り込んだ柳生家で、神楽は油断もあって早々に左腕にダメージを負わされた。
 とはいえ精々ヒビ程度に収めていたそれを、総悟は力尽くで反対に曲げ、結果神楽は完全に骨折してしまった。
 まぁ神楽はその直後、倍返しと称してヒビも何もなかった総悟の右足をへし折ったのだから、最早どちらに非があるのか分かったものではない。

「だから、そっちの手でなら許してやる。殴れよ」
 杖の先で指された神楽の左腕は、完治したばかりとはいえ間違いなく完治しているのだ。夜兎の力に無抵抗で殴られれば痛いどころの騒ぎではない。それこそ骨折は免れないだろう。
 最早どちらに非があるのか分かったものではない諍いは、神楽の中では喧嘩両成敗、の枠に納まっていた。だから謝る気はさらさらないが恨む気もない。どうせそもそもがムカつく男だ。
 けれど、総悟の中ではそうではないのだろう。だから神楽に殴られることで清算しようとしている。
「・・・」
 神楽が無言で腕を振り上げた。総悟が息を飲むのが分かる。

 ぱちっ、

「痛っ! ・・・チャイ、ナ?」
 デコピンをかましたそのままの形の神楽の手を、さも不思議そうに見やる総悟が何だか可笑しい。
「どういうつもりでィ」
「だって、駄目ヨ。お前、言ってること可笑しいネ」
 唸る総悟に背を向けて、言葉を閉じる。

「お前が手負いなのに、手を出したりは出来ないヨ」


 神楽一枚上手で沖神。
 『銀ちゃんにやられたら倍返ししろって言われてる』からって素直にやり返す神楽可愛い。と言う話。

038:痛っ!(神楽)






「ねー銀ちゃん、私、銀ちゃんのこと好きヨ。好き」
「あーはいはい俺もお前のこと大好きですよー」
「私の方がもっと好きヨ! 好き好き大好きー!!!」
 ぎゅうと抱き付く。苦しくはない程度に力を弛めたのに、銀ちゃんはぐえ、と大袈裟に声を上げる。
 それが面白くて笑ったら響いたみたいで顔を顰めて耳を押さえた

 銀ちゃんは本当はもっと冷静で感情の起伏に乏しい人だ。
 そう気が付いたのは結構最近だった。
 銀ちゃんは私達が本音を見せ易いように自分の本音は見せない。
 或いは私が銀ちゃんに憧れるように銀ちゃんも私達にどこかで憧れているのかも知れない。
 その優しさと強さが悲しくて嬉しい。

「お前そんな簡単に好き好き言ってたら有り難味なくなるぞ」
「何ヨ! 簡単じゃないネ! 好き好き好きー!!」
「だー! 分かったから耳元で騒ぐんじゃねぇ!!」
 銀ちゃんが叫んで私の腕を引き剥がしたので、負けじと再び腕を回す。単純な握力なら負けない。
 何ヨ、何よ、そんなに邪険にすることないでしょう。

 やられたら倍返ししろって言ったのは、銀ちゃんヨ。


 「やられたら倍返ししろって銀ちゃんに言われてるネ」
 あの台詞にどんだけときめいたことか。私が(お前がかよ)。

82 すきすきすきっ






「お前絶対一人っ子だろィ。だからそんな我儘自分勝手に育ったんだ」
「その台詞そのままのし付けてお返しするアル!」

 途中までは普通の口喧嘩だったのだが、些細な一言からまずい方に話が流れ、
 話題が話題だけに制御が効かなくなった2人は傘と刀にそれぞれ手をかけた。

 やめなさいよお前らと言いながら、どうやって場を収めるかなぁと頭を痛める。
 なんだかんだ言って優しい子達だから、今ここで本当のことを全部言ったら珍しく素直に謝る彼らを拝めるのかも知れない。
 けれども彼も彼女も知られることを望んではいないのだ。今も、多分この先もずっと。

 だからせめて自分は忘れまい。思いながら、取り敢えず手の早い子は銀さん好みじゃないのよとかほざいてみた。


 ミツバ編と吉原炎上編の両方を知ってるのってそういえば銀さんだけだなーと思って。






「ねー銀ちゃん、私のパジャマ何処アルか?」
「お前が醤油瓶ひっくり返したから洗濯機の中だよ」
「あ、そっか」
 合点がいったと1人頷いた神楽は、唯一自分のスペースとしている押入れの下の段から替えのパジャマを引っ張り出す。
「・・・なぁ、神楽」
「何ヨ」
 あ、これ長袖だった。呟いてそれを押し込み再び頭を突っ込んで、
「お前さぁ、下着でウロウロして良い歳じゃないでしょ。仮にも男の前で」
 ようやく半袖のパジャマを探し当てたらしいパンツ一丁の神楽はきょとんとした顔で俺を見詰め、別に、と口を動かした。

「私、銀ちゃんに見られて恥ずかしいことなんて何もないネ」

 あっさりとそう言った。
 そのまま床に座り込んでもそもそとパジャマに腕を通す。
「・・・いや、うん。でも新八君とかが困るだろうからもうちょい気ぃ使え」
 それもそうアルな、了解ヨ。同じくあっさりと言って歯ブラシ歯ブラシーと妙な節を付けて歌いながら洗面所へ消えた。
「・・・あー」
 今のが嬉しい何て、俺も毒されたもんだな。


 お父さんとして信頼されて嬉しい銀さん。
 体見られることに対して羞恥心のない女の子が凄く好きです。







 ssに満たない小ネタ集でした。
 改めて見返すと銀さんと神楽と沖田しか居ない。
 お題は上2つが「オールジャンルに100のお題」、その下のが「Short message」から。

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