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□劇場世界
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「ねぇ愛」
「なにー?」
2時間目の授業が終わり、鏡とにらめっこをしていたら前の席の友人が身を乗り出して来た。意識の半分以上は鏡に向けたまま一応答える。
「なに、じゃないでしょ! あんたさ、昨日初出社だったんでしょ?」
「うん。まぁ」
「どうだったのよ、天下のク●プトン社は!」
「どうって言われても・・・」
蓋付きの手鏡を畳む。友人はあーもう、ともどかしそうに言って、
「愛は自覚が足りない! あのオーディションの倍率分かってるの!? 1000倍だよ1000倍!! 愛はそれ勝ち抜いてデビューしたんだよ!?」
「うん」
正確には1018倍、ね。ちなみに書類選考からだと一万倍超える。
わたしが受かったのなど殆ど運だ。歌手は昔からの夢だったが、あんな大手の会社からこんなに華々しくデビュー出来るとは流石に思ってなかった。
「ほんと羨ましいなー。ね、もう誰かに会ったの?」
「うん。昨日一応メインの人とは」
「いいなー私も一回で良いからKAITO様と喋ってみたい! ほんっと格好良いよねKAITO様!」
「・・・そぅお?」
「じゃあさ、愛は誰がタイプなの? レン君? がくぽ? それともやっぱりKAITO様?」
「んー・・・」
『あ、き、君がそう、なんだ・・・。う、うん。宜しくね。・・・わっ! ・・・あ、握手、か。そう、だよね。御免、つい・・・。い、いや、殴られる気がして・・・』
『ふーん、お前が新入り? 何か、1000人も集めて選んだ割に全然フツーだな。そんなに歌上手いの? あ、もしかしてコネとかそういうの?』
『ほう、君が噂の! これが念願の後輩という奴なのだなぁ。ああいやいや想像以上に麗しいので驚いたまでだ。勿論ルカ殿には及ばぬがな』
「・・・結構、どれもイマイチだったかな」
えーそうなの愛ってば理想たかーい、と言う友人に、お前の好きなKAITO様の本性教えてやろうかと言おうとして辞めた。
「じゃあさ、」
「まだ何かあるの?」
「当たり前でしょー。ね、女の子はどうだった? 初音ミク見た?」
「うん・・・、まぁ、ね」
『新人? へぇ、今度は生身なのね。・・・・・・。・・・・・・。あぁ、悪かったわ。私、グリーンとイエローの取り合わせが大嫌いなものだから』
『はいっ、宜しくお願いしますね! ・・・え? ミクさん? あの人はすっごく恥ずかしがり屋さんなんです。本当は凄く優しい人なんですよ?』
『あらそうなの、貴女が。お目にかかれて光栄ですわ。ええ、精々精進することですわね。まぁ、わたくしには到底及ばないでしょうけれど』
「ねぇねぇプライベートで仲良くなったら紹介してよ」
「や、あんまり仲良くなれそうにない。ってゆーか、あんまなりたくない感じ」
「あれ? 愛ってアンドロイド嫌いだっけ?」
「別にそういう訳じゃないけど・・・。あ、」
「何なに?」
『ああ、こっちこそ宜しくね。・・・ほんと、問題児ばっかで頭痛いだろうけど頑張って。私も出来るだけ悩みとか聞いてあげるから』
「メイコさんは結構好印象、かな」
「ふーん? でもあの人人気ない方だよねぇ? どうしても初音ミクとかに比べたらちょっと見劣りするっていうか」
「んー・・・。そうかな」
「てかさ、」
「何?」
「愛ってばほんっと我儘。流石未来のスーパーアイドルGUMI様だねー」
「そういう言い方しないでよ」
じゃあどういう人なら良い訳、としつこく食い下がる友人に、そうだなー、と暫く考えて、取り敢えず裏表のない人かなと答えておいた。
+
スーパーアイドル達の裏側でした(笑)。GUMIちゃんも地味にショック受けたと思う。でもそれ以上にこの先大丈夫か自分、って思ってる。
GUMIの本名、もうあれで良いですか。取り敢えず下はあれで。
それか読みは「あい」だけどちょっとモジって芸名に、ってことでも良い。
53 世界は劇場だという