他ジャンル

□掌の有意義な使い方
1ページ/1ページ

「じゃーん! ストレート!!」

 直後、おお、と声が上がって、数人でテーブルを囲んだ中、頭一つ飛び出したツインテールが機嫌良さそうに揺れる。
「えへへーまたぼくの勝ちー! ね、そろそろ何か賭ける?」
 気持ち足を早めて歩を進め、その背後、すれ違いざま、
「どうせイカサマなのだろう?」
「・・・へっ!? あっ、酷いよテトちゃん!!」
 待って待ってぼくそんなのやってないからね!
 大袈裟にうろたえて弁解するのが聞こえた。

「もう、テトちゃんってば何てこと言うのさ!」
 見破られたらどうするの!!と不用心に大声で叫ぶ。そういう所だけが子供だなと思った。
「そう思うならイカサマなど辞めることだ。続けていればいつかはバレるぞ」
 大概計算能力の備わっているアンドロイドの賭博は原則禁止。そうでなくても未成年の賭け事は法律違反だ。
 並みの成人より余程体格の良い12歳に言ってやる。
「えーでもぼく折角手が大きいから、使わないと損かなって思って」
 片手だけ手袋を嵌めた大きな手をひらめかす。
「・・・屈め」
「う? こぅお?」

 ごつっ

「い・・・ったぁあああ!!」
「折角だと思うならもっと有意義に使いたまえ! イカサマなどに使う方が余程損ではないか!!」
 一喝すると、ルコは頭を擦りながら立ち上がって、思い切り見上げる羽目になる。
「はぁい。分かったよ」
 こんなことでテトちゃんに嫌われたら、そっちのがよっぽど損だ。と続けた彼(?)はやっぱり何も分かっていないと溜息を吐いた。
「・・・まぁ、私も経験がないと言えば嘘になるがな」
「え、ほんとに?」
「人前で演算機能を使う事に凝っていた時期はあったが、馬鹿馬鹿しくなって辞めた。昔の話だ」
「ふーん」
「だからまぁ、少し、」
 懐かしくはあったけれども。そう言葉を括って苦笑すると、兎に角これで辞めておきたまえよと念を押して、踵を返す。

 ルコはうーんと、とか暫く唸っていたが、ふいに声が途切れ、
「えい!」
「ひゃ・・・っ!?」
 背後から突然抱きすくめられて声が裏返る。無駄に豊満なバストが首筋に当たる。
 ていうか手加減しろ足付いてない! 首締まる! お前自分の体格考えろ!!

「こうする方が有意義ってことだよね?」
「誰もそんなこと言ってないだろうっ!!」


 問題児ルコと保護者テト。テトは作られてから何年か経ってる設定で。
 テトの口調は「君は実に馬鹿だな」から派生しました。

348 こどもの頃を懐かしめるおとなはきっとこどもなのだろう

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ