□オセロゲーム
1ページ/1ページ

「あれ、骸? 何でお前表に・・・」
 でもまぁいいや。丁度良かった。そう言った綱吉君がいつになく好意的な顔をしていたので、僕は死んでもおかしくないような任務でも押し付けられるのかなと思った。

「ねぇ、これとこれだったらどっちが良いと思う?」
 そう言って彼が両手に取り出したのは要人暗殺と組織壊滅の命が書かれた書類、ではなくシルバーの腕時計だった。
 どちらもシンプルで中々趣味が良い。ただ結構メタリックなデザインだったから、綱吉君にはあまり似合わない気がした。いや多分それなりに似合うのだろうけど、彼がこういうのを余り好まないことを知っているからそういうふうに感じただけ。

「まぁ、こっちですかね」
 どちらかと言えば派手な方を選ぶと案の定そぅお?と意外そうな声を出した。
「・・・じゃ、こっちにしよ」
「趣味変わりました?」
「いや、俺じゃなくて。プレゼント」
 言われずとも思い当たりそうなものだったけれどその発想はなかった。

「・・・僕に、ですか?」
 だって、彼から形があるものなんて貰ったことがない。僕が彼の身体を乗っ取ろうとして以来ずっと目の敵だ。いやでも昔はもうちょっと優しかった。クロームと彼が仲良くなった辺りが本当の境目だ多分。
「何で俺がお前に時計送らなきゃいけないんだよ」
 ほらそんな冷たい目なんかしなかった!
「今日、獄寺君の誕生日だから」
 でも自分のセンス今一自信なくてさ、こういうの、骸も好きだから分かるかなーと思って。
 そんなの知らない。君以外が生まれた日何てどうだって良い。だって僕とクロームのそれは意味をなさない日付けだ。
 だから獄寺隼人の誕生日なぞどうでも良い。知らない。以前聞いたかも知れないけど忘れてしまった。そうじゃないんです今日は。9月9日は。
 いやそれこそきっと君にはどうだって良いことなのだ。とうに、忘れられた日なのだ。僕が何故今日に限ってこちらへ来ているのかも。僕にとっては獄寺隼人の誕生日何かより僕の誕生日何かよりずっとずっと重要な今日という日は。僕が僕を裏切って心も身体も在り方全てがひっくり返ったその日は、
「今日は・・・、」
 貴方と、僕が、

「・・・ねぇ、骸」
 綱吉君はちょっと呆れたみたいな声で僕を呼んだ。
「何を勘違いしてんのか知らないけど、日本には、命狙ってきた奴に、命狙われた日に物送るような習慣はないんだよね」
「・・・身体を狙っただけです」
「一緒だよ。ていうか尚悪いから。そんな訳で今日は特に顔見せんな。あ、ついでにこれ処分しといて。もう要らないから」
 綱吉君はさっき僕が選ばなかった方の時計を僕の手に乗せて、獄寺君の私室へ向かうべくエレベーターへ消えた。
「・・・なぁんだ」

 覚えて、いたのか。

 暫くは時計を貰って上機嫌だったのだけど、裏側にto.Gの掘り文字を見付けてしまったので取り敢えず即刻灰にしておいた。
 本当に処分押し付けただけだったなんて!


 9月9日は獄の誕生日でありvs黒曜の日。時期外れ失礼。
 アニメじゃ1年生の後半だから多分違うけど。
 お題の「オセロ」は「裏切り」の意。

75 いっそオセロは芸術だ(全てが裏返しにされる)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ