□青く照らす道
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「綺麗な青い瞳ね。ご両親からの遺伝なのかしら」
「分かりません。拙者は親の顔を知りませんので」





「綺麗な青だね」
「え?」
 扉が開いた音がして振り返ると、今まで1人で修業していたらしい、ボンゴレ匣を手にした沢田殿が立っていた。
「炎」
 自身の額を指して沢田殿が言う。
「そうですか? そのように言われたのは初めてです」
 答えながら、空中を旋回していたアルフィンを匣に戻した。
「沢田殿は、青が好きなのですか?」
「そういう訳でも、ないけど」
「山本殿や、スクアーロも雨属性でしょう」
「うん。でも、少し色が違う気がする。山本やスクアーロのは深い真っ青で、夏空みたいな色だけど、バジル君のは少し緑がかった、でも唯の青緑でもなくて、混じり気っていうか、ムラがあって、海みたいな色だよ」
「そう・・・ですか?」
 自分ではあまり意識していないから分からないが、炎色に個人差などあったろうか。混じり気があるというなら単に純度の差かも知れない。だとしたら修行不足だ。
 少しの自己嫌悪。そしてふと気が付くと、沢田殿がごく近い位置から拙者の炎を覗き込んでいた。
「え、あ・・・、さ、わだ、どの・・・?」
 沢田殿の細い指がこめかみを滑って、少し背伸びをした彼が額を凝視し続ける。
「あの・・・」
「混ざってる」
「え、」
「これ、大空の炎が混じってるんだよ。本当に、ほんのちょっとだけど」
 大きな目を見開いた沢田殿は少し早口にそう言った。
「本当・・・ですか」
「うん。だから緑っぽく見えたんだよ」
 1人が複数の波動を持っているのはそう珍しいことではない。
 唯、最も強い1つ以外の属性が実戦レベルまで達していることはごく稀だ。拙者もそうだったから今まで気付かなかったのだろう。
「しかし驚きました。拙者に雨以外の波動が流れていた何て・・・。それも、大空の、」
 言いかけて、言葉が止まった。

( ・・・そういえば )





『これが、死ぬ気丸ですか?』
『あぁ、正直、まだ試作みてーなもん何だが』
 親方様から受け取った、死ぬ気状態を強制発動させるという、小さなガムかラムネのような粒を見詰め、
『やばそうだったら吐け』
『・・・はい』
 遠回しに飲めと命令され、いざとなったら指を突っ込む覚悟を決めて、白い艶やかな錠剤を飲み込む。
『ん・・・、あ、が・・・っ!』
 かあと胸の内から熱くなる感覚。指を入れる前から吐き気に似た衝動。耐え切れず膝が折れた。
『う・・・』
『バジル!』
 親方様の大きな手が拙者の肩を掴む。瞬間吐き気は霧散し、代わりに身体中に感じたことのない感覚。
『はぁ・・・、は・・・』
 地面に手を付いた、目の前に流れる川に顔が映る。
 水面に拙者の顔が映り込む。全部、青い。否、しかしこれは、

 青い、炎。

『雨か・・・』
 色を認めた親方様が呟く。
 拙者の額でゆらゆらと揺れるのは、水のような波紋を描く青い炎だった。
『大空だと良かったんだがな』
 恐らく聞こえないように呟いた声はどうしてか聞き取れてしまった。
 でも仕方がないと思う。大空の属性を持つ人間はごく稀だ。拙者何かが偶然発現する確率など幾らもない。





「属性って、遺伝するのかな」
 拙者の炎がかき消えるのと同時に、沢田殿が何気なく呟いた。
「えぇ、血液型程絶対の法則はありませんが、親子や兄弟で同じ属性を発現することは多いらしいです」
「ふぅん。そう言えば、獄寺君とビアンキも同じ嵐属性だっけ」
「ボンゴレボスも代々大空属性ですしね」
 思えばそれは奇跡のような確率だ。100人に1人とも200人に1人とも言われる大空の属性が、跡取りの中に必ず発現する何て。
 物心付く前に親方様に拾われ、両親共不明な拙者は、雨も大空も誰から継いだものなのか定かではない。
 あ、じゃあ、ふいに明るく言った沢田殿は確かに笑顔だったけれども何故か無表情に見えた。

「バジル君のお母さん ・・・・はきっと雨属性の人何だね」

 妙に確信を持って沢田殿がそう言い切った理由はよく分からなかった。
 でもきっと超直感の力なのだろう。流石は時期ボスだ。


 注意書きを付けるべきだったか・・・?
 小林泰三の『人獣細工』を読んで書きましたが、あまり関係はありません。

 解説↓
 バジル君は家光さんとどっかの女の人の子供(卵子買ったとかかも知れない)。
 新しい薬とかはつー様の前にバジル君で人体実験。血が繋がってるから体質近いだろみたいな。そもそもその為に産ませた子供。
 バジル君は知らない。奈々さんも知らない。つー様は察してる(怖い)。
 家光さんはちゃんとバジル君を好きだけど、やっぱりつー様が1番。
 こんなどろどろのぐちゃぐちゃ誰得。

251 焼き尽くす群青

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