□山本とハル
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「あ、山本さん。今お帰りですかー?」
「ハル」
 制服のハルに声をかけられ振り返る。
 ハルはそのままこちらへ駆け寄り、ちらと周囲を伺った後にお一人ですか?と訊いた。
「うん。悪ぃけど1人。ツナと獄寺ならまだ学校だと思うぜ」
「あ、それはいいんです。後でツナさんのお家まで行きますので。あと獄寺さんに会う予定はありませんので。あの人お菓子嫌いでしょう」
 どっちも愛されてんな相変わらず。思いながら何となく一緒に歩く。
 まぁ彼女からのそれならば拒絶はされまい。

「それ、自慢ですか?」
「へ?」
 視線が俺の腕を差しているのに気付き、あ、と思う。
「いや、鞄に入んなくて・・・」
 教室を出る時にはどうにか納まっていたのだけど、下駄箱に入っていた分と校門で渡された分は手に抱えるしかなくて。
「はー・・・。すっごいですねー」
 純粋な感嘆の後、ハルはスクールバッグからピンクの紙袋を出して、
「これあげますよ。ハルが学校にチョコレート持って行くのに使ったやつです」
「あれ、お前女子中じゃなかったっけ」
 ていうかツナが好きなんじゃなかったっけ。
「だからです。お友達に配ったんです」
「あー成程、大変だなー」
「別にそうでもないですよ。皆配るのが楽しいだけなのでなければお返しも要らないし」
 気付けば分かれ道が近付いて。

「だからお返しは要りませんので」
 振り向きざまハルが言って、返事をする前に彼女は駈け出していた。
 紙袋の中に可愛らしい包装のブラウニーを見付けて、紛れる前に気付いて良かったと無意識に思った。


  たくさんのチョコの中の1つでしかないけれど


 山ハル。お返ししますかね?
 「たくさんのチョコ」は「山本が貰った」ではなく「ハルが作った」という意味。

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