コロコロ系

□あくがれる
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「サラマンダ! お前の力を見せてやれ!!」
 鷹ノ助のグリフに再び挑みかかるが、上手くダメージを与えるには至らない。
「どうせ来るなら必殺転技で来いよ!」
 意図したものでは無いだろうが、今一番俺の神経を逆撫でる言葉に奥歯を噛む。
「くそっ、動きが読めない・・・!」
「何だ何だ、この程度なのか準優勝!」
 グリフの連打を喰らうサラマンダが、自身に重なる。くそ、くそっ!
「サラマンダ! そんな攻撃、お前のパワーで弾き飛ばせ!」
 熱くなった頭で命令を飛ばす。
 ついさっき、フェニックにはそれで勝てたんだ。もっとぶつかれ、押し退けろ、弾き飛ばせ!

 ――― あいつ、みたいに。

「こらぁ、忍ー!! いい加減に目を覚まさんか!!」
「!」
 店長の声が脳を叩いた。
「忍! お前がゼロに負けんとする気持ちは分かる。だが、ゼロに負けまいと、お前がゼロと同じ事をしてどうする!!」
 ・・・ゼロと、同じ?
「お前には、お前にしか出来ないバトルがある筈!!」
「俺にしか、出来ないバトル・・・」
「そうだぜ忍、俺はお前に勝ちたい一心で、必殺転技を編み出したんだ! 今度はお前の番だぜ!!」
 ゼロが声を上げた。彼の力は、俺に負けた事で生まれたのだと。
「・・・そうか、俺はイフレイドの必殺転技に対抗しようとする余り、サラマンダに無いものを求めていたんだ」
 彼は、俺に負けてもイフレイドの長所を引き出す事しか考えなかったのに。

( すまない、サラマンダ )

「この勝負、俺の勝ちだぁー!」
 鷹ノ助が腕を振り抜いた。シャープボトムがスタジアムを滑る。
 正面から、あれを弾き返せたらどんなに良いかと夢想する。
 けれど、
 サラマンダには、そんな戦い方は向いていない。

 ゼロが強いからって、ゼロに勝ちたいからって、ゼロの真似をしていても強くはなれない。
 
「行け、サラマンダ! 無幻火流撃!!」
 本当に彼に追い付きたいと思うなら、彼と同じように我武者羅に、彼とは違う俺の、サラマンダの戦い方を磨いて行くしかない。
 本当は最初から分かっていた。サラマンダには悪い事をしたと思う。
 でも、だって、

『イフレイド! バーニングアッパー!!』

 ワンディトーナメント決勝で、ボロボロになりながらも俺に挑みかかったゼロの、
 伝説の鋼銀河から、強くなれと託されたというイフレイドの、
 あのパワーが、あの必殺転技が、

 余りにも格好良かったんだ。憧れてみて何が悪い。


 忍ちゃんてばゼロみたいな勝ち方がしたかったのかなと思って。

※補足
『あくがれ』は『憧れ』の語源。
本来はあるべき場所から離れてしまう事の意。
転じて相手に心を奪われてうわの空になってしまう事を指す。

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