遊戯王
□思わせぶりな
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「よお」
男の声がして、俺は没頭していた本から顔を上げた。
見ると水色の髪とお世辞にも好印象ではない三白眼と、頬に走る黄色のマーカー。
「・・・えーと・・・、瓜生、さん?」
まだ3日か4日ぶりだったけど名前はあやふやだった。
その時に瓜生さん、を連呼していた連れは今日はいない。
「おお、久しぶり・・・でもねぇか。えーと・・・」
「ラリー」
名乗っていないのだから知る訳がない。簡潔に自己紹介をして本を閉じた。
・・・何の用だ、この人。
数日前遊星と(一方的に)D-ホイールを巡ってデュエルをしたシティー出身のゴロツキは、俺には興味なさそうに辺りへ視線を巡らせた後口を開いた。
「あのD-ホイーラーはどうした」
あぁ、そういうことね。俺は本を閉じて傍らに置くとまた簡潔にその答を述べる。
「遊星なら行っちゃったよ」
「嘘つきやがれ。俺はたった今まで工場にいたけど見なかったぞ」
俺の言葉をそう取ったらしく瓜生が噛み付いた。
ていうか貴方こそサボリですか。
遊星は元々工場には殆ど行っていない。時折行ったかと思うと、監視の目を盗んでジャンクを漁ってはD-ホイールのパーツになりそうなものを探したり、簡易のパソコンみたいなものを作っては勝手に売ったりしていた(勿論違法)。
働き手が少ない方が一人頭の給料も上がるしな、と言いながらずっと危ない橋を渡ってた。
言ってる事は最もだし、殆ど四六時中D-ホイールに向かってるんだから仕事してる暇なんて実際ないんだけど。
でも、よくあれでマーカーを押されずに今までやってきたなぁ、と思う。
そう思う俺自身も工場へは行っていない。12歳になったので働く許可は下りているが、ブリッツ達が15くらいまでは甘えてろというのでありがたくそうさせて貰っている。
とはいえ何もしないでいるのは申し訳ないので、大抵は本を読むか遊星から何かしら教わるかして日中を過ごしていた。今は必然的に一日中読書、ということになる。
「おい、隠してもいいことねぇぞ」
口調は荒いが、別に殴られるんじゃないか、とかそういう雰囲気ではなかったので俺は改めて瓜生に向き直った。
「じゃなくって、サテライトを出て行っちゃったって言ってるんだよ」
「どういう・・・意味だよ?」
瓜生が眉を潜める。思い当たりつつも在り得ない、という表情。
「シティーに行ったんだよ。遊星は」
はっきりと告げてやった。直後、
「ば・・・馬鹿言え!!」
案の定、狼狽した声。そりゃそうだ。ここを出て行ったのなんてジャックの奴と遊星だけ。増してジャックのことは知られてないし。
「あいつは、また俺とデュエルするって言ったじゃねぇか!」
「・・・」
そっちか。
「遊星が思わせぶりなのはいつものことだよ」
暗黙の了解、なんて言葉は通じない。返事がないときは大抵聞いてもいないんだから。
とはいえ偶の返事もあんまりアテにならないけど。
・・・俺のワンショットブースター返ってくるのかなぁ。
「へへ、でも、やっぱ凄い奴だったんだなぁ。あいつ」
あっという間に立ち直ったらしく声高に言う瓜生は、俺に勝ったんだから当然だな! と笑う。
「・・・ま、確かに凄いけどね」
あの程度の実力でそんなに自信が持てる貴方も。
今頃何してんのかね、と瓜生が言い、ジャックには会えただろうかと俺がぼんやり考えていたら、突然瓜生があ、と声を上げた。
「あの野郎、次は俺が勝つって言った時にいいだろうって言いやがった癖に・・・!」
・・・よく覚えてるなー。
思いながら、もう一度本を手に取って口を開いた。
「不戦勝で、って意味だったんじゃないの?」
+
ラリー+瓜生さん。ラリー→遊星←瓜生さん?
瓜生さんは良い人だと思う。そして遊星は仕事しろよと思う(笑)。けど力仕事似合わなさそうだ。
てかラリーが変に冷めててごめん。
49 有言不実行