遊戯王

□手折られた翼で
1ページ/1ページ

「なぁ十代」
「んー?」

 お互い何をするでもなく、
 ただ、太陽が暖かくて、
 風が心地よくて、
 あずけた背中に安心して、

 だから、背中合わせで外に座っている。

「お前、どうして黒にしたんだ?」
「なにが」
「ズボンの色」
「あぁ」
 十代は片膝を曲げて、そこに顎を載せる。
「汚れが目立たないかなって思ってさ」
「そうか」
 沈黙。

「万丈目は?」
「何が、だ」
「何で制服の色戻さねーの?」
「別に理由などない」
「そっか。そういえばお揃いだな」
「アホか」
「お前、黒似合うよなぁ」
「ふん、俺は何でも似合うんだよ」

 立ち上がる。

「どこ行くんだよ」
「もう暗くなる」

 闇に溶けるように。
 ばさり、とマントが広がって。
 まるで、鴉の羽のように。

 そのまま、俺が傷つけないとこまで、飛んでいってしまえばいいのに。
 どうしてお前は戻って来るのだろう。

 万丈目は黒だ。
 全部の色が混ざった暖かい色。

 じゃあ、俺は?
 いくら服の色を変えたって、
 俺は、『闇』で、それがたとえ黒く見えたとしても、本当は、
 色なんか、ない。

「ほら、行くぞ十代」

 闇の中に、真っ先に飲み込まれるのはきっと黒だ。
 何も見えない、何もない闇の中、
 それでも鴉は、確かな何かを探してまた飛び立つのだろう。

 いつかその翼をへし折るのがきっと自分であることがどうしようもなく怖い。
 なのにその恐怖を包んでくれるのはこの黒くて白い腕だけなんだろう。


 十万。怖い十代を書こうとしたハズだったのにいい子になってしまって愕然。
 時間軸は来週辺りですか。

10 鴉が飛び立った (Short message)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ