遊戯王

□甘
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『万丈目のアニキ、どうしたのよ』
「うるさい。消えろ」

 耳元で話しかけてくるおジャマイエローを振り払って、また布団を被る。
 ブルー寮のベッドは、その布団の厚さも、重さも、よく考えられている筈なのに、
 重くて、苦しくて。

「・・・ぅ・・・う」
 苦しい。苦しい。
 あの天使と、十代を見てからだ。

『羨ましいの?』
「!?」

『精霊の力を使える十代のダンナが羨ましいの?』
 ・・・何だ。
 見透かされたかと、思った。

『でも、とにかくちゃんと話せて良かったじゃない。それに、万丈目のアニキだって強いんだから』
「当然だ」
 誰が、何が、強いものか。
 いつだって、無力で、肝心な時ほど何も出来なくて。

 唯一の繋がりである筈のカードさえ、今、世界から消えようとしている。
 怖い。怖い。
 一体、いつ本当の『無関係』になってしまうのか。

「分かったから、カードに戻れ」
 尚、弱々しい態度の俺に気圧されたのか、おジャマイエローは大人しくカードに戻って行った。
 何だ、次からはこうして黙らせればいいのか。
 でも、こんな、自分らしくない。

「もう、ずっと昔に諦めた筈だったのに、な」
 あの異世界で、俺達を振り払ってヨハンを求めた時に。
 俺達を置いてユベルの手を取った時に。
 彼の隣に立ち続けることも、
 その力になることも。

 けれど、まだ、
 まだ、何かしてやれるのではないか、なんて。

 彼が、帰って来てくれたものだから、それが少なからず自分の為でもあるように思えてしまって、
 ・・・浅ましい。
 こんな、今更。

『俺の中には、ユベルがいる』
『この世界にお前の居場所がないなら、お前も、俺と共に、俺の心の中で生きればいい』

「・・・畜生」
 彼の心の中はいつだってカードカードカード。
 それでいいと思っていた筈なのに。

 いっそ、モンスターに生まれれば良かったんだ。
 そうすれば、こんな真綿を飲み込まされるような苦しみもなくなるだろうし、
 弱さに悶える心も、消える。

 けれど、こんな苦しみだって今更。
 耐えるだけなら俺にだって出来る。
 ただ、そうただ、

 十代の心の一部になって、彼の為にその存在全てで戦う、なんて、
 なんて、
 なんて、

 甘い。


 時間ないから日記でちらっと書いてたやつ。
 オネストが羨ましくて仕方ないじょめ。女々し過ぎるこいつ。
 イエローは全部分かってて言ってます。ずっと見てたら嫌でも分かるかと。

09 憧れは当に過去の話だ (Short message)

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