遊戯王
□眼刺し
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「メザシってさ」
「は?」
唐突に呟いた十代に顔を上げた。
いつしか、翔や剣山のいない時は当然のようにはす向かいで朝食を取るようになった。
俺と十代の間には、二人分の質素なレッド寮の朝食。
質素、とはいえ準は本来食に頓着がないので、身体に害がなく食べられる味ならメニューは何でもいい。実家で食べる脂の塊のような肉よりはこちらの方が余程。
まだ互いに殆ど手を付けていない朝食の、
ここではお馴染みのやや小ぶりなメザシ。
十代は実に自然な動作でその目があった場所へ箸を付き立てた。
「よく考えるとえぐい名前だよな」
「このモンスターのデザイン、俺の好みなんだ」そう言って笑う時と同じ声と同じ顔。
まるで、その言葉に眉を潜めた俺の感覚がおかしいとでも言いたげに笑った。
「・・・・・・そんなことを言ったら、魚の死体を前に食欲を感じる方が余程えぐいと思うが」
黙っては、いけない。
『違う』雰囲気を、作ってはいけない。
「おぉ、そう言う考えもあるか」
何が、一体、何がそんなに楽しいのか。
「でもさ、食欲ってのは本能だから仕方ないと思うんだよ。けど、名前を決める時はしっかり思考が働いてる訳で、なのに食べ物にこういう名前つけるのってのは何か」
面白いなと思ってさ。
「あ、なぁ万丈目。目・・・っていうか、視覚ってさ、人間が取り入れる情報の大半を担ってるだろ?」
「約80パーセント、な」
「あー・・・そうだっけ? うん。まぁそれでさ、だからなのか人間って他の生き物の『目』がすげぇ気になるんだってさ」
ヤバイ、と
思った時には既にメザシから引き抜かれた箸の先端が文字通り目の前に迫っていて、
「じゅう、だ、い・・・」
ツ、と瞳の表面を滑るように撫でる。
染みるような、射すような、形容しがたい痛みと、本能的な恐怖。
生理的な涙が重く膜を張った。
「お前の目ってさ、本当濡れたみたいな黒なんだな」
箸を引くと、そのままの動作で朝食を食べ始める。
「・・・」
「ん?どうした万丈目?」
早く食べないと遅刻するぜ?
すこしだけ、首をかしげたその目元を明るい茶の髪が滑って、
何か、誘うように大きく見開かれたその目に、
随分かかってようやく目を閉じる。
溜まっていた涙が零れそうになり、袖口で慌てて拭った。
目の奥が、痛い。
+
ようやく書けたちょっと怖いアニキ。
時間軸不明。翔がイエローでヨハ子がいないっぽいから2期かな。
十万は二人っきりだとこんなの日常茶飯事。じょめの胃が心配。
139 人を射る美しい目を潰したい(Short message)