遊戯王

□真昼の月
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「わぁ、似合うじゃない」
「えへへ、久しぶりだからちょっと照れるっスね」

 一年ぶりに再び袖を通したその青い制服。
 今度こそ、目の前の彼女と対等になったのだろうか、と思った。

「3年生でようやくブルーか・・・。随分かかったなぁ」
「それでも凄いわよ。上がれないまま卒業する子も多いんだから」
「明日香さんやお兄さんは1年からブルーだったっスけど」
 少し、眉根を寄せて微笑んだ。
「私は女子だもの。・・・それに、亮は別格だわ」
「まぁ、ね」

 瞬間曇った表情。見逃す筈もない。

「お兄さんにも、この制服見せたかったなぁ」
 それに、アニキにも。

「・・・十代、ね。何を考えてるのかしら」
「でも、大丈夫っス」
 アニキは、そこにいるんっスから。

「・・・翔君」
 明日香が困ったような顔をする。
 この人は、どうしてこう目の前の人間に弱いのだろう。
 今、本当に傷付いているのは、明日香であり、十代であり、

 そしてきっと、僕の兄であるのに。

 兄は夜だ。
 青く、黒く、暗く、静かで、大きく、優しい。
 なのにそれに守られるものはいつでも眠っていて、
 あぁ、なんて、

 切なく、儚く、美しく、そして哀れであることか。

「僕、やっぱりこの制服は憧れっス」
「まぁ、クラスが全てではないけどね」
「そういうのもあるけど、これは」

 白と青。
 真昼の空。

「明日香さんの色っスから」
 兄の、置いて行った色だから。
「翔、君・・・?」
 困惑する明日香に、また微笑んで見せた。

「なんて、お兄さんは思ってたのかなって」
「・・・」
「冗談っスよ」
 肩を竦めて背を向けた。

「翔君の、」
「?」
「翔君の髪も、空の色なのね」
 けれど、あの人とは、違う。

 同じだなんて思ってないし、思って欲しくもない。
 憧れだけど、そうありたくは、ない。

「・・・・・・やっぱ、お兄さんは哀れっスよ」
 僕が見てもそう思うんだから。

 けれど、真昼を纏った彼女の髪は薄く暖かい月に見えて、僕は舌打ちをしたくなった。


 アニメに触発されて亮明日前提翔明日。翔も結構怖い子。
 カイザーが好きになるほど嫌われ者になっていく・・・。

12 夜の美しさと切なさ、儚さを (Short message)

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