遊戯王
□低血圧
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『♪』
「・・・んー・・・」
オルゴールの柔らかい旋律。それはそれでも耳障りな、準の目覚ましのアラーム音。
右手を目一杯伸ばして時計を叩く。
ばちん、と派手な音を立てて。すぐさま音は止まった。
時刻は、6時半。
今日はアカデミアは休み。
「もう少し・・・」
寝ていても、いいか。
血圧が極端に低い準は、朝起きるのに相当な気力を要する。
だからこそ、平日は早く起きる訳だが。
「・・・」
いや、でも、
もうずっと、休日でも早く起きていたような。
あぁ・・・
『十代、やっと起きたのか』
『まんじょーめぇ? お前休みの日まで朝早いのな』
布団を撥ね退けると、勢いを付けて上半身を起こす。
・・・また皺になるのにこいつ。
『ふん、当然だ』
『俺も遅くはないのになー。寝顔見たかったのに』
へらっと笑う。
『・・・何ふざけたこと言ってやがる』
『あっはは、じゃあ寝顔は諦めるからさ』
一緒に、寝よ?
寝起きの、少し掠れた声。
気付いたら、一番下のベッドに引きずり込まれて。
『おい、貴様・・・』
『いいじゃん。休みなんだしさ』
半日ぶりの外気に薄く潤んだ瞳で覗きこまれて、かと思えばがっちり俺を抱きこんでそのまま瞼を落とす。
重・・・くはないか。俺の方が上にいるんだし。
腹立たしいことにこいつは俺の上半身を抱えるくらいは何ともないらしい。
更に腹立たしいことに、こいつを起こさないように腕から抜けるのは俺には無理だ。
何より苛立つが、俺はそれらを経験で知っている。
無理矢理抜け出して起こせばロクなことにならないことも。
布団は追いやられていても寒くはない。
微妙なところだが苦しくもない。
起こさないように少しだけ頭をずらして、十代の胸に耳を当てる。
規則的で、不規則な、心臓の音。
微かな寝息。布越しの体温。
十代の寝顔。
『馬鹿が・・・』
眠れるものか。
「くそっ!」
一々覚えている自分に腹が立つ。なんて女々しい。
苛立たしい。疎ましい。
あいつより早く起きて、より長い時間を共有したかった過去の自分とか。
今、どうしようもなく胸に落ちる冷たい塊とか。
寂しい? そんな訳あるか。
ばっと一気に起き上がると、ぐわんと眩暈がして再び豪勢なベッドに沈んだ。
「くそ・・・」
眠れない。
+
4期でいきなり十万が別居を始めた件について(副題←語弊)。
十代は文字通り思い出したようにあぁそんな時もあったなーて思うくらいだけど、じょめにとっては物凄い意識を占める事柄だろうなーと。
最後は十代がお早うって言いに来るとかでも良かったのですが、4期十代はやらんわなと思ってじょめ可哀想なまま終了(あーあ)。
08 オルゴールの自動演奏 (Short message)