遊戯王

□そのままの笑顔で
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 昔から赤が好きだった。
 持っていた積み木は赤ばかり使って。
 使い過ぎて欠けた積み木は、高く積み過ぎれば必ず崩れた。
 それでも、憑かれたようにそればかりに手を伸ばした記憶が、残っている。

「十代」
「んー?」
「話があるんだけど」
「・・・おお! ヨハン、来てたんだ」
 睨み合っていたカードの束からようやく顔を上げたかと思えばそんな言葉。

「今いいか?」
「へ? うん。いいけど」
 デッキをケースに戻すと、床で胡坐をかく。
 俺は一番下のベッドに腰をおろして向かい合った。
 今は翔も剣山も、準も居ない。
 俺と十代、二人きり。
「で、何?」
「俺さ・・・」
「うん」
「俺、十代のことが好きなんだ」
 沈黙。
 十代は少しだけ目を見開いて固まっている。
 ・・・そりゃそうか。

「・・・あぁ、そうなんだ? で?」
「で、って・・・」
 十代は真っ直ぐに俺を見詰めている。
 けど、その表情は全くいつも通りで。

 おかしい。おかしい。
 何だ、これは。
 何?

 俺が何も言えないでいると、十代はふいににっこりと笑った。
 そのまま立ち上がると、こちらに歩み寄り、
「十代・・・?」

 どん、

 衝撃に息を詰める。
 背中からベッドに沈んだ(ここのベッドは沈むほど柔らかくないけど)。
「じゅう・・・」
「分かったから、黙ってろよ」
 誰、だ。こいつは・・・。

 十代は扉に歩み寄り鍵をかける。
 変わらない笑顔でこちらを振り向いた。
 それが、たとえば怒りを露わにしていたり、
 無表情であったりしたら、俺はあいつを殴り飛ばしてでも逃げたのだろうけど、

「大人しくしてれば多分怪我はしないから」

 あまりに十代らしい、俺の愛した十代そのままの笑顔で、
 俺はそのまま動けなかった。

 ただ、閃く十代の上着に、ふと、
 昔執着した積木と、それが崩れる音を酷く怖れていたことを思い出していた。


 リク頂いた十ヨハ。半端に微裏。
 黒十代お好きとのことでしたので黒くしようとしたのですが、私の書く黒十代は唯の何考えてるか分からない人になります。
 明日後日談書く・・・かも?

つ 積み木が音を立てて崩れる (夏の日の夕暮れ)

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