遊戯王

□敗北願望
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「十代、今頃何やってるのかなー」
 あからさまに大きめの独り言。
 いや、俺に話しかけているのか。
「さあな・・・」
「やっぱり『覇王』ってのが十代何ですかね?」
「少なくとも俺は、そう思っている」
 二人でここに場所を決めて以降、エドはよく喋るようになった。
 いつでも楽しそうに。
 何も楽しくはないこの状況で。
 時を待つように、間を繋ぐように、俺に話しかける。

「やっぱり十代は強いなぁ。ふふ、早く、」
 会いたいなぁ。
「幾ら何でも不謹慎じゃないか」
 俺には関係ないが。
「いいんです。だって、十代を助けられるのは僕じゃないですから」
 先日、ここを訪ねて来て、俺が倒したモンスターが身に付けていた指輪。
「僕が真剣でもそうでなくても、変わらない」
 エドは何の気なしにそれを奪い取って、
「だったら、いいえ、たとえそうでなくても、僕は僕が楽しめればいい。まぁ・・・」
 今、手の中で弄んでいる、それを、
「最終的に、僕と十代が生き残らなければ困りますけど」
 また、何の気なしに床へ落とした。

「これで何人・・・いや、何匹倒したのかな」
 きゅ、とそれを踏みつける。
「やっぱり強いんですね。貴方って」
 にこり。

 ばき、

また・・負けてくれれば、少しは楽しいのに」
 瞳を細めて弾んだ声。
「負けて欲しいのか?」
「まさか。私は唯の『召使い』そのように怖れ多いことなど」
 とても申し上げられません。
「・・・」
 作り笑顔の上手い奴だ。
 俺に真偽の見分けはつかないが、どちらかは分かる。
 ここに来て、ようやく理解した。
 こいつが、真の意味で俺に笑いかけることなど、ありえない。

 それでもこいつは笑う。
 いつでも楽しそうに。
 そうして俺が傷付く時を待っている。
 その手を使わず、その足を使わず、その言葉さえ封じたまま、
 ただ微笑みを湛え、俺が崩れ落ちる瞬間を待ち望んでいる。
 もしかしたらそれを待つことこそ楽しいのかも知れない。
 なんて、攻撃的な表情。

 がん、がん、

「あ」
 扉を叩く音。笑みを消してそちらを見やる。
 そして、にやり、と、

 嗤った。

『誰かいるのかー!』
「お客様ですよ。『旦那様』?」
 また綺麗に微笑むと、優雅な動作で玄関へ向かって行った。


 143話冒頭。エド亮・・・っていうか。
 エドは多分うちで一番好き嫌い激しい。そして嫌いなもの多い。こいつが好きなのって十代と剣山くらいではなかろうか。普通に性格悪いといいなって思うの・・・!
 自分が十代を助ける、とかそういう重要なポジションじゃないのは自分で分かってそう。

33 笑顔の暴力 (Short message)

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