遊戯王

□放課後保健室
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「いったいよぉ馬鹿ぁ・・・」
 どうせ誰も聞いてないけど、聞いてないから、
 低く呟くと、例の痛みに顔をしかめて枕に頬を押し付けた。

 がら、

 扉の音。
 もう戻って来たのかな。
「鮎川せんせ・・・」
「レイ?」
 降って来たのは不覚にも耳に心地よい、けれど精神的には微かに負荷をかける声だった。

「ヨハン・・・先輩」
「何してんだ?」
 むか。少しは気遣わしげな態度とか出来ないのか。
「見て分かりません? 寝込んでるんです。さっさと出て行って下さい」
 っていうか何の用だこの野郎。
 見るからに健康そうな顔しやがって。
 どうせ来るならせめて先生がいる時にして欲しい。

「や、絆創膏ないかなーと思って」
 何処にあるか知らねぇ?
 また十代と馬鹿騒ぎでもしたのか、手の甲の擦り傷を見せる。
「・・・知らないし、知ってたって勝手に持って行っちゃ駄目です」
 上半身だけ起き上がって、ズボンのポケットから一応二枚。絆創膏を渡してやった。
「わ、さんきゅ」
 露骨に嬉しそうな顔。
 その場で貼ろうとするが、右手の甲なのでうまくいかず悪戦苦闘する。
 あぁもう。

「貸して下さい」
 ひったくるように奪い取ると、少し乱暴に貼り付けてやった。
「・・・どうせなら十代様が来てくれればいいのに」
「そりゃ、悪かったな」
「でも十代様が怪我したら悲しいなぁ」
「おいおい、俺はいいのかよ」
 いいに決まってる。ヨハンが怪我しようが入院しようがどうでもいい。
 まぁ今のこの状況は頂けないけど。

「そういえば、お前どうしたんだよ? 顔色悪いぜ」
 ・・・何を今更。
 言い返そうとしたら、ずん、と痛みが来て前に突っ伏した。
「お腹痛い・・・」
「帰った方が良いんじゃねぇの?」
 さして心配もしていなさそうな態度。
「今、鮎川先生が薬取りに行ってくれてるんです。受け取ったら帰ります」
 帰ったって一人だけど、少なくとも憎らしい先輩の相手はしなくてもいいし。

「・・・あぁ、生理痛?」
「先輩、しょうもないこと知ってますね・・・」
 そういうデリカシーのないことは思っても言うなよ。

「・・・女の子は大変だな」
 呟くように、そんな、ふいに優しげな声。
 大きな手の平が、ゆっくりと髪を梳いていく。
「すげぇよなぁ。人間が人間生むんだぜ」
 いつの間にかベッド脇の椅子に腰かけて。

「・・・そうですよ。ボク、子供生めるんですよ」
 額に汗を浮かべて、それでも笑って見せた。

 十代様と、あたしの子供が生めるんですよ。

 ヨハンは面食らったような顔をして、
 一瞬後にふっと笑った。

「・・・俺とお前の子供だって生めるぜ?」

 顔が陰になって、
 両肩の横にヨハンの両手。
 そういえば、ボクはこの前16歳になって、この人はこんな幼稚なことしてるけど18歳で、ボク達結婚出来るんだなぁってぼんやりと思った。
 あぁ、それは十代も一緒か。

「レイちゃん、起きてる?」
「へ・・・? あ、はいっ!!」

 どん、

 ごつ、と鈍い音。知ったことか。
 寧ろ感謝して欲しい。不純異性交遊は悪くすれば退学だ。
「あら、ヨハン君? 何か用?」
「あー・・・いえ、すいません。俺、もう帰りますね」
 頭を摩りながら立ち上がって、微笑むと小走りで保健室を出て行った。

「お見舞い? いい先輩ね」
 鮎川先生は薬と水を用意しながら笑った。
「はぁ・・・」
 どこが。


 アンケで好きと仰ってくれる方がいらっしゃったのでヨハレイ。
 レイちゃんは普段からしたたかですが、ヨハンはレイちゃんにだけやたら態度がえげつないっていうかなんていうか・・・。
 良いコンビだとは思うのですよこの二人。十代の前では猫被り同盟(笑)。翔とエドもそうかな。
 タイトルは同名の漫画から。読んだことないですが気になってます。

大人の階段駆け上がれ!


 お詫び:人から指摘されて気づいたのですが、レイちゃんは中学1年の歳なんでしたねごめんなさい!
 今更修正するのも白々しいのでここでお詫びいたします。
(07,12,13)

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