遊戯王

□「「どうか、二度と」」
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「じゃあな、レイ」
「はい、さようなら。ヨハン先輩」

 にこり、一目でそれと分かる作り笑顔。
 そういうところも一々似ている気がして、どうしても苛々と唇を噛んだ。
 どうしてこいつの前ではこんなに素が出てしまうのだろう。
 大きく一度息を吐く。

 そうだ。今わざわざ演技をしなくてもいい。
 どうせ最後だ。

「十代、来ないみたいだな」
「ええ、そうですね」

 勝ち誇ったようにレイが笑って、
 ヨハンは無表情にそれを見下ろした。

「大丈夫かな、あいつ・・・」
「どうでしょうね。ヨハン先輩には関係ないですけど」
「そうやって笑ってるガキよりは関係あるさ」
「そうですか? 良くて対等だと思いますよ」

 今度は、作らなくても笑っていた自分に気付く。

「中学に帰れよお前」
「行ったことないので『帰る』ところじゃあないと思いますけど。先輩こそ、早く帰ってくださいね?」

 本音で話せる相手、
 嫌い、嫌われて、それでも一向に構わない本音を向けられる人。

 本当は、とても大切なのではないのだろうか。

 迷いそうになる心を抑え、5つも離れた、けれど対等なライバルを、
 対等に、絶望的と分かって望みに縋っている恋敵を、
 本当は違う目で見たいのかも知れない自分を叱咤する。

(十代が居なければ・・・)

 迷うことすらないのかも知れない。

 はっと我に返る。
 無意識によぎったその考えにぞっとして、
 まるで、否、それはまさに神を冒涜した気分で、
 頭が割れそうな酷い罪悪感が襲う。

 そして、それを思わせた目の前の人間をきつく睨んだ。

「俺はお前が嫌いだ」
「ボクも貴方が大嫌い」
「だから」
「ですから」

 出来ることなら、この心を乱す人に、

「二度と会うことがないように」

 心から、この心から、
 纏わる不安と、
 この憎しみが消えることを願って、
 引き換えに、多大な安堵と、
 少しの痛みを。
 皮肉にも、それだけが互いに重なる想い。

 十代に、ではなく、目の前のひとに出遭わなければ良かったのだと、そこで初めて気が付いた。


 少し久しぶりにヨハレイ。男女で同じ相手を巡ってバトルっていいですよね。どっち視点かはご自由に。
 でもレイちゃんがじょめやエドに喧嘩売ったりするイメージはあんまりないかも。
 じょめってばフェミニストだしなぁ。

48 愛の指揮者を殺す (Short message)

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