その他

□淡い思い出
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関東大会決勝。
不二はシングル2で立海の切原と対戦した。
その試合中、瞳を充血させ放った切原のボールが頭に直撃。
不二は視力を一時失った。
己の感覚を頼りに進めた試合。
試合が終わり、光が戻った視界の中に一人の女の子の姿があった。



「あの、大丈夫ですか?」

立海の制服を着ている女の子。
いきなりの対戦校の生徒の登場にまわりがざわめく。
中には非難する声も聞こえる。
それでも女の子は怯むことなく、不二の前に膝を着いた。

「赤也が、ごめんなさい」

女の子の瞳は今にも泣きそうで、水で濡らしたタオルを患部に当ててくれた。

「僕は大丈夫だよ。ありがとう」

不安をあたえない様に、不二はにっこりと笑った。
痛みも引いてきている。
濡れたタオルがとても気持ちよかった。

「でも、いいのかい?」
「え?」
「ここは青学側だよ?真田たちに後で文句いわれるんじゃ・・・」

タオルは嬉しいけれど、赤也と呼び捨てにしてる彼女は、おそらく立海のマネージャーのはず。
ここに来て反感を得ないはずがない。

「そんなこと、関係ないです。それに文句は言わせない」

彼女ははっきりとした口調で言い切った。
そこには強い意志が感じられた。

「目が見えなくなってしまったときは怖かった。今後の選手生命にかかわってしまうことだから・・・。」

そう話す彼女の表情は真剣で、そしてかなしそうに見えた。




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