モノクロ

□1
1ページ/1ページ



死にたい。








いつから、こんなことを思うようになったのだろう。







ごめんね。なんかでは伝わらないのだろうけど、ありがとう。は、なんか違う気がした。



私の、最期のオンナの勘。
なんだか笑えてきちゃう。









某ビルの屋上。カッコつけて、書いてみた遺言書。三行で終わってしまった。なんだか恥ずかしくなって、破ってポケットの中にしまった。




30階建てのビル。ビルから、見える月がやけに綺麗に見えた。最期だからだろうか。






さっきから、ポケットに入っている携帯の震えが止まらない。



バイト先からだろう。もう、一週間も休んでるからなあ。電話に出た方がいいのだろうか。
「今から、死ぬので。」なんて、言ったらびっくりするかな。案外、笑われたりして。





私の頭は、以外と冷静だった。





まだ、携帯の震えが止まらない。
私の手のように。






「あの、もしもし。」




返事がない。




「あの…、すみませんでした。バイト休んで。で、辞めます。お世話になりました。」




「辞めてどうするん。」




「あ、それより…何回も電話に出なくてすみませんでした。」




「いや、俺…一回しか掛けてへんで。」





先輩は"俺"とは言わないのに。




「あの…誰ですか。」





「誰でしょう。」




「ふざけてるんですか。」





「寂しそうな声やな。」




無視ですか…。




「あなたには関係ないでしょ。元々です。」






「今にも、自殺します。って感じの声。」





そんなに分かりやすいかな。





「そうですけど。今から飛び降りるんですけど。」




「あ。そうなん。今から。」





「はい。なので電話、切りますね。」





「ちょ!あのさ、俺が最後なん。」





「何がですか。」




「電話の相手。」




「はい。まあ、」





「えー。嫌やわ。自分もう死ぬんやろ。俺が君の最後の話し相手って。」




「え…でも…」





「とりあえず、お願いやって。今日は止めといて。」




「そんな…」




「そう言うことで宜しくやで。」





電話が切れた。





普通は、これでも飛び降りればいいものの、私にはそんな勇気が無かった。
何かが私を引き留めている様な気がした。そんな事を考える私は、本当に臆病だ。




「…明日にしよう。」







.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ