モノクロ
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死にたい。
いつから、こんなことを思うようになったのだろう。
ごめんね。なんかでは伝わらないのだろうけど、ありがとう。は、なんか違う気がした。
私の、最期のオンナの勘。
なんだか笑えてきちゃう。
某ビルの屋上。カッコつけて、書いてみた遺言書。三行で終わってしまった。なんだか恥ずかしくなって、破ってポケットの中にしまった。
30階建てのビル。ビルから、見える月がやけに綺麗に見えた。最期だからだろうか。
さっきから、ポケットに入っている携帯の震えが止まらない。
バイト先からだろう。もう、一週間も休んでるからなあ。電話に出た方がいいのだろうか。
「今から、死ぬので。」なんて、言ったらびっくりするかな。案外、笑われたりして。
私の頭は、以外と冷静だった。
まだ、携帯の震えが止まらない。
私の手のように。
「あの、もしもし。」
返事がない。
「あの…、すみませんでした。バイト休んで。で、辞めます。お世話になりました。」
「辞めてどうするん。」
「あ、それより…何回も電話に出なくてすみませんでした。」
「いや、俺…一回しか掛けてへんで。」
先輩は"俺"とは言わないのに。
「あの…誰ですか。」
「誰でしょう。」
「ふざけてるんですか。」
「寂しそうな声やな。」
無視ですか…。
「あなたには関係ないでしょ。元々です。」
「今にも、自殺します。って感じの声。」
そんなに分かりやすいかな。
「そうですけど。今から飛び降りるんですけど。」
「あ。そうなん。今から。」
「はい。なので電話、切りますね。」
「ちょ!あのさ、俺が最後なん。」
「何がですか。」
「電話の相手。」
「はい。まあ、」
「えー。嫌やわ。自分もう死ぬんやろ。俺が君の最後の話し相手って。」
「え…でも…」
「とりあえず、お願いやって。今日は止めといて。」
「そんな…」
「そう言うことで宜しくやで。」
電話が切れた。
普通は、これでも飛び降りればいいものの、私にはそんな勇気が無かった。
何かが私を引き留めている様な気がした。そんな事を考える私は、本当に臆病だ。
「…明日にしよう。」
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