short storys
□翼の背中
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君はいつも窓辺で空を見上げている。
どうして飛び立たないんだい?
そうだ。
ここから始まったのだ。
僕達の出会いはこんな事だったのだ。
彼女は自分では踏み出せなかった一歩を僕と踏み出した。
翼を羽ばたく事を忘れてしまった彼女はいつも僕の翼を見ていた。
『空は気持ちが良いですか?
私にはわかりません。
私には翼がありませんから』
彼女は自分の翼の存在を知らなかった。
僕は翼を持つ者である。
空には翼を持つ者が多くいる。
君は翼を何故隠しているんだい?
『私には翼がありません』
君の翼はとても美しく輝いている。
そうだ。
きっと君の不安が翼を覆い隠してしまっているのか…
ならば僕が振り払おう。
君が空に飛び立つ為に。