short storys

□翼の背中
1ページ/1ページ


君はいつも窓辺で空を見上げている。
どうして飛び立たないんだい?


そうだ。
ここから始まったのだ。
僕達の出会いはこんな事だったのだ。
彼女は自分では踏み出せなかった一歩を僕と踏み出した。

翼を羽ばたく事を忘れてしまった彼女はいつも僕の翼を見ていた。

『空は気持ちが良いですか?
私にはわかりません。
私には翼がありませんから』

彼女は自分の翼の存在を知らなかった。

僕は翼を持つ者である。
空には翼を持つ者が多くいる。

君は翼を何故隠しているんだい?

『私には翼がありません』

君の翼はとても美しく輝いている。
そうだ。
きっと君の不安が翼を覆い隠してしまっているのか…
ならば僕が振り払おう。

君が空に飛び立つ為に。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ