medley
□獣たちに夜は優しく
2ページ/5ページ
こんな風に2人きりで飲む夜だって、グリードさんは決して、店の女にするみたいに、あたしの肩を抱いたりはしなかった。
それはあたしの誇り――あたしはあの子たちとは違うんだ――でもあり、なのにそれは少しだけ、あたしを傷付けたりもした。
(なにさ。ちょっとくらい触ったって、怒りゃしないのに)
気付かれないくらいに小さく唇を突出す。
強欲は斜向かいの席で、呑気な顔をしてグラスを煽っている。
「注ぎましょうか」
「おぉ。悪いな」
空になったグリードさんのグラスに、身を乗り出してボトルを傾ける。
背もたれに腕を回した姿勢のまま、グリードさんはそれを受けると、なみなみ注がれた酒を舐め、目を細め、心持ち唇の端を持ち上げてにんまりする。
その様子に、少しだけ苦笑した。
まったく、何もかも欲しがる強欲(グリード)が、あたしなんかと飲む安酒で。
幸せそうにしちゃってさ。
胸が、苦しくなる。
「グリードさんは」
「ん?」
「グリードさんは、どうしてあたしたちなんか、側に置いてくれるんですか?」