medley

□獣たちに夜は優しく
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あたしたちはみんな、暗い方が安心する。
昼間より夜が安心する。

口に出して確かめ合った事はないけれど、そんなの分かりきった事だった。
闇は奇形に優しい。
あたしたちはみ出し者も、黙って内包してくれる。

そう、だから。
デビルズネストはいつだって、夜みたいに薄暗いんだ。
あたしたちがいつだって、安心してここにいられるように。
眠れない幾つかの夜を騒ぎ飛ばすために、売る程アルコールまで用意して。
それは寡黙な、グリードさんらしい優しさ。
愛情。
日陰者のあたしたちが、諦めるしかないんだと思い込もうとしていた物。

あの日
「ここに居ればいい」
と、そう言って貰えた瞬間の、あの気持ちが、あたしたち以外の誰に分かるだろう。
分かってたまるもんか。

そう、
だから――


「どうかしたか、マーテル?」

「いえ、なんでもないです。グリードさん」


少し笑って、首を左右に振る。
闇に同化しそうな黒服のグリードさんは、革張りのソファーに体を預けたまま、ふぅんと一声発しただけで、特に気にするでもなく安酒を煽った。
(金なら使い切れない程あるのに、グリードさんのお気に入りはなぜかこの安酒だ)

あたしも黙って、同じ酒を口に運ぶ。
チープなほろ酔いが、どこにだって落ちてるような、ありきたりの幸福を連れてきてくれる。


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