小説(・ω・)

□そうだ、日本に行こう!
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私は、ひどく困っていた。
何故か。
目の前の奇妙なカップルと思しき二人組のせいである。
二人は私に何かを仕切りに訴えている。
もしこの二人が普通の言葉を話していたならば、まともな対応ができたかどうかは別として、ここまでは困らずに何とかやりすごせたと思うのだが。
二人の言葉は──外国語だったのだ。





アイザックとミリアは困っていた。
勢いでアメリカを飛び出して日本まで来たはいいものの、行くあてなどまるでなかったのである。
何故日本なのか。
黄金の国、だからである。
そう。二人は懲りずに、今度ははるばる日本にまで金を採りにきたのだ。
日本に関する奇妙に曲解されたたくさんの知識を携えて。
しかし、言葉も通じずドル札も使えない日本ではいくらこの二人といえどもどうすることもできない。
取り敢えず出会う人すれ違う人片っ端から声を掛けて金の情報を得ようと試みていたのだが、ことごとく無視された。
疲れ果てた二人は流れ流れて中野にいた。
「疲れたな、ミリア」
「へとへとだね」
「腹も減ったし」
「ぺこぺこだね」
もはや誰も目を合わそうとさえしていないのだが、二人はまったく気にせず唯ふらふらと歩き続けている。
ふと、アイザックが一人の男に目をとめた。
「なあ、あの人にこの辺に休める場所がないか聞いてみようぜ」
「あの人ならこたえてくれそうだね!」
「ああ!今までの人は兎も角、あの人ならこたえてくれるさ!」
アイザックとミリアはそう勝手に決め付け、そのどこか陰気な男に破竹の勢いで詰め寄っていった。
そんな訳で、話しは冒頭に戻る。


 
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