小説(・ω・)

□テストで馬鹿騒ぎ
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「なあフィーロ、お前マジでやばくね?やっても無駄じゃね?」
フィーロがよく通っている町内会の集会所で勉強をし始め、暫く経った時のクレアの呟きである。
学校が終わってすぐのこの時間、町会長達はまだいない。
妙な自信の籠った呟きは、フィーロの心に突き刺さる。
「いや…そんなことねえ…俺だってやればできる…ぜ…?」
クレアの言葉がいやに現実味があったためかなりの自信を失ったフィーロに、近くにいたラックが軽いフォローをする。
「クレアさん、せっかくフィーロがやる気になったんですからそのやる気を削ぐようなこと言っちゃ駄目ですよ。まあ──」
やってできるかどうかは別ですが、と最後にフォローだか何だかわからないものまで付け足していたが。
「ラックお前──」
「ほら、ちゃんと手を動かして下さい」
何も言い返せないフィーロは仕方なく再び勉強し始める。
ジャグジーやグラハム達も大人しく勉強しているようで、文字を書く音や紙をめくる音だけが広い部屋に響く。
「はかどってます?」
少し飽きてきていたフィーロの横に、エニスが腰を下ろす。エニスも勉強はできる方だ。
「ああ、まあ」
「…ここ、間違ってますよ」
「…」
エニスがフィーロに優しく教え始める。その様子をみて、ラックとクレアは席を立つことを決意する。少し頬を赤らめたフィーロを見て、溜め息をつきながら二人は別のテーブルを探した。その途中。
「グラハムさん…何やってるんです…?」
ラックは勉強道具をテーブルに広げたままその下で携帯をいじっているグラハムをみつけた。
「ニコニコ…ですか」
わざわざニコニコが見られる機種に変更したらしい。
「お前出席日数的に留年しそうなんじゃなかったか?こんなことしてて平気なのかよ」
クレアが一応もっともらしいことを言ってやる。周りに何故かシャフトがいないのだからいくらクレアだって何か言いたくなるだろう。
「何を馬鹿な。俺が留年するとでも言うのか?」
「むしろ退学させられるだろ」
ラックはグラハムが本気で、危機感がない分フィーロよりまずい状況なのではないかと不安になる。
「シャフトさんはどうしたんです?」
シャフトがいればまだ今よりはマシな状態になると思うのだが。
「そういや見掛けないな」
何となく、救いようがない気がした。
「グラハムさん、将来は自動車工場に勤めたいんでしょう。勉強した方がいいんじゃないですか?」
「それもそうなんだが。しかし──ああ、悲しい。悲しい話をしよう。何もわからないからやる気が起きないのだ」
ラックは、シャフトが戻ってくるまでの間、彼の勉強をみてやることにした。
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