海賊中短篇
□花酔い、春霞
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ヒラリ、ハラリ……。
ハラハラと舞い落ちるその花びらは、まるで雪の様で……。
わたしはグラスに注がれたワインを片手に、みんなから離れた場所に聳え立つ、一本の大樹の根元に腰を降ろした。
下からこの大樹の枝を見上げ、目を閉じる。
「……懐しく思うのは、この大樹がオハラの『知識の大樹』に雰囲気が似ているからね……」
そう呟いて、目を開けた。
「ところでどうしたの、航海士さん?」
わたしは視線を上に向けたまま問い掛けると、不貞腐れた顔をして航海士さんが姿を見せた。
「どうしたのって……。ロビンがフラッとみんなの場所から離れたから……」
「フフフ、ごめんなさいね? この大樹を見掛けた時から気になってたの」
「……オハラの?」
航海士さんがストン、とわたしの隣りに座り込む。
勿論手には、グラスとワインのボトル。
「聞いていたの?」
「……聞こえたの」
プイ、と横を向いて答える航海士さんは、少し幼い感じがして、思わず笑みが洩れた。
「な、なに笑って……」
「いいえ、やはり貴女は可愛いわね」
「な、何をいきなりッ!」
ボンッ! と音がしたかと思う位に顔が赤くなり、グラスのワインを一気に空けた。
……未だ口の中で、ブツブツ言っているわ。
ふと見ると航海士さんの頭に、桜の花弁がついていた。
「動かないで、航海士さん」
「……え?」
振り向いたのと同時に、花弁を取る。
思わず視線が絡み合う。
……綺麗な目をしているのね……。
だからなのかしら……。
「ロ……んんっ……!」
わたしは航海士さんの唇を塞いだ。
驚いて目を見開いている航海士さんの逃げる舌を絡めとり、貪る様に口内を犯す。
「ん……ふぅん……」
気が付けば航海士さんは、わたしのシャツをグッと掴んでいた。
ゆっくりと離れると、ポテン、とわたしに寄り掛かって少し潤んだ目で見上げて
「……なに、するのよ」
……そんな目で睨み付けられても……。
「そそられるわ……?」
「なっ……!? ひゃんッ!」
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