短編夢

□君が早く目覚めることを……
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午後四時前、静かな放課後の渡り廊下。

「さて、今日はどんな話をしやしょうかねィ」

今日も俺は、その渡り廊下の屋根へと登っていた。いつも放課後になると俺は、ここへ出てきて読書をしたり物思いに耽ったりしている。

「また来やしたねィ」

俺の周りには鳩と雀、烏が集まっていた。烏が言う。

「キョウハドンナハナシ、シテクレンノ」

「そうだねィ……じゃあ折角だから昔話でもしてやりまさァ」

鳥達の眼は興味津々だ。

「俺ァな、ちょいと前まではバリバリの武道少年だったんでィ」

鳥達の眼が少し遠くなる。

「てめーら信じてやせんねィ?

まぁいいでさァ……
俺ァ一年の頃、剣道部にいやした。そんで武道バカだった俺ァすぐにその緩み切った空気が嫌になったんでィ」

「ソレデソレデ?」

雀が口をはさむ。

「そんで俺ァ部に、特に先輩方に反発を始めやした。
けどねィ、結局は新米。生意気だってんで先輩方は怒りやした。
俺ァ期待の星だとか言われてやしたが、『つけ上がった』っつーんでその目線は一気に冷たいモノに変わったんでィ」

鳥達は静かだった。

「けどねィ、そんな俺にも味方はいやした。
武道経験はありやせんでしたが、やっぱり緩んだ空気が嫌だと言ってやした。
そんで俺達は二人で反発し始めやした。

そして……イジメが始まったんでさァ。
酷いもんでしたぜ……何故かって、イジメられたのは相方だけだったんでさァ!!」

怒りのあまり声を荒げてしまい、驚いた雀は怖がって逃げていった。

「本当に酷いもんでねィ。
次第にエスカレートしやした。
しかも悪意はクラスにまで広がってやした。そして明確な嫌がらせが始まったんでィ」

「フザケンナ!!ガァ!!!」

怒った烏が飛び去っていった。
鳩は黙っていた。

「なぁ、鳩…それからどうなったと思いやす?」

「サァ、ワカラナイナ」

「退部しやしたよ。
イジメがまかり通る武道が、学校生活があってたまるか!ってねィ。
それでもクラスでのイジメはおさまりやせんでした……」

鳩が見上げる。

「そうしてイジメられ続けたアイツは……」

「……アイツハ?」

「手首を切ったんでィ……
何度も何度も切りつけた。
しまいにゃ首にまで…ねィ……」

鳩は、苦虫を噛み潰したような顔になった。

「一命は取り留めやした。
けど、アイツは壊れちまいやした。
俺の仲間は、あんたら鳥だけなんでィ……」




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