才色飛車〜利き駒の調べ〜

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「そもそも皆が細いから私が太って見えるだけだーって言ったら言ったで“愚劣な。言い訳とは見苦しい。そもそも実際に我の方が細いのではないか?”とか言いやがりましてね…!」

「あー…アイツらしいな…」

「それで私ももう耐えられなくて…元就さんなんて貧弱なだけじゃないですか!馬鹿!大嫌い!…と喚いて出てきたわけです、はい…」

「(元就…って、え!?毛利の兄さん!?)」



慶次の何か言いたそうな視線を感じたが、苦笑いで返した。
つか大嫌い、って…。
元就は自棄でも起こしてんじゃねぇか?
まぁ自業自得だな。

俺は立ち上がって、しゅんとしたままの彼方に声をかける。



「なぁ彼方、ちょっと立ってみ」

「?はい」

「ほら俺と比べてみろよ。明らかにお前の方が細いだろ?」

「で、でも…」



言葉を濁した彼方を見て、慶次も立ち上がった。



「そうだよ!俺と比べても彼方ちゃんの方が細いし!腕とか見てみなよー」

「な?それにお前の言う通り元就が細っこいから気になるだけだ。でも他人から見れば細いとは言ってもやっぱり元就の方ががっしりしてるぜ。男と女で体型も違うしよ」

「うんうん!だいたい初めて会った俺が太ってるとは思わなかったんだ!だから彼方ちゃん全然太ってないよ!」

「そうですか…?」

「おうよ。それにアレだ…お前は今のままでも…ほら、その…かわい「彼方ちゃん可愛いんだから気にする必要ないってー!」…てめ慶次…!」



慶次の野郎…!被ってんだよ!
言いたかったことが言えず若干へこんだが、彼方は少し笑顔になっていた。



「ありがとうございます…。そうですよね、元就さんを基準にしちゃいけませんよね」

「そうそう!やっぱ彼方ちゃん笑ってる方がいいよー。せっかく可愛いんだからさ!」

「えへへ…そ、そうですかね?//」

「(慶次ィ…よくもまぁ照れずに…)つーか彼方よぅ。別に敬語じゃなくていいぜ?呼び捨てでかまわねぇし」

「俺もー。確かにその方のがこっちも楽だよな!」

「え、じゃあ…そうする」



はにかむように笑った彼方に俺も笑った。
これは元就に感謝だな。
泣かしてんじゃねぇよ、とも思っていたが…。
それ以上に彼方が俺を頼ってきたことが嬉しくて仕方ない。
俺の所にコイツがいるこの機会…存分に利用して楽しませてもらうぜ。
そしてあわよくば…!
い、いや…早まるのは無しだ。

何にしても見誤ったな、元就。
彼方がいつでもお前の側にいると思ったら大間違いだぜ?



利き駒 四国へ家出する


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