才色飛車〜利き駒の調べ〜
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旅立ち
――上田城
「佐助ぇえ!」
幸村の大きな声が響く。
その声に名を呼ばれた佐助は苦笑いしながら姿を現した。
「はいはーい?」
「彼方殿が!彼方殿が甲斐へ来るそうだ!」
「彼方ちゃんが!?」
「お館様からの文にそうはっきりと書かれておる!」
「なるほど…竜の旦那たちが来るのに合わせたんだな」
うんうん、と一人で納得している佐助。
だがその表情はどこか嬉しげだった。
「よし!我らも遅れをとるわけにはいかぬ!早速お館様の元へ行くぞ!」
「え!?早くね!?」
「ぅお館様ぁああ!!!」
出発までまだ余裕があったのだが、幸村はすでに行く気MAX。
佐助は再び苦笑いして頭を掻いた。
「早く彼方ちゃんに会いたいね」
「うむ!」
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――奥州
「政宗様、毛利より書状が」
「Ha!毛利か!どんな顔してあの書状を読んだのか見たかったぜ」
そう言いながら書状を開いた政宗。
ニヤニヤと笑っていたが、書状の中身を読んで少し驚いた顔をした。
「彼方も甲斐に行くそうだ」
「それはそれは。毛利のお付きですか」
「いや…彼方だけみたいだぜ。まぁ忍は付けるだろうがな」
「よくあの毛利が許したものですね」
「彼方がなんか上手くやったんだろ。だが書状で散々釘を刺されちまったぜ、彼方に手を出すなってな」
書状を見返しながらクツクツと喉を鳴らす政宗。
そして元就が書いた文の最後に付け足されたものを見てふっと柔らかく笑った。
“Concerning your letter, I am pleased to inform you that I will go to Kai, too.
Anyway...I want to become starlike. Because it is thought that you can be healed a little. But do you catch me when I fall, Masamune?”
「“貴方の手紙に関して、私も甲斐に行くとお知らせできることを嬉しく思います。”…か」
“それはそうとね…
私は星みたいになりたいんだ。
だって少しは貴方を癒せるような気がするから。
でも私が落ちる時には捕まえてくれる?ねぇ政宗?”
「…早く会いてぇな」
「左様でございますな」