才色飛車〜利き駒の調べ〜

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「よっ…とうっ」

「…あのー彼方さん?」

「なんですかねー八尋さん?」

「…手綱…ちゃんと握って下さい。落馬します」

「握っちゃったら伊達乗りの練習にならないじゃん」



城を出発してからしばらく経った頃。
二人は森を進んでいた。
手綱を離したまま馬に乗る彼方を見かねて、八尋が木の上から声をかけた。



「伊達乗り?」

「うん、政宗はね、こう…腕を組んだまま馬を走らせるんだよ。それっ」

「Σ実践しなくていいっすから!やめて下さい!速度を落として…!」

「もー…八尋ちゃんは心配性だなぁ。ねぇ白星?」



彼方は仕方ないといった様子で手綱を握り、速度を落とす。
そして馬に話し掛けながらその毛並みを撫でた。

黒茶の身体に、額に白く丸い柄のある馬。
彼方の愛馬、白星だ。
その額の白い丸を見て白星と名付けられた馬は、乗馬の練習の為に元就が彼方に与えたものだった。
今では彼女の良き相棒となっている。



「まったく…彼方さんが怪我したら元就様にどんな仕打ちを受けるか…」

「大丈夫だって!」

「どこにその根拠があるんすかー!」

「それよりさ…八尋ちゃん」


彼方が真剣な表情で静かに口を開く。
八尋も真面目な顔で返事をした。
…――囲まれている。



「…はい。囲まれt 「乗馬の動きってなんかやらしくない?」 あー確かに…Σっていや違う!周りを…!」

「別に囲まれてることは気付いてるよ。ただそれよりも言いたかっただけ」



しれっと言い放った彼方に八尋はため息を吐いた。



「そういうこと言ってるとまた元就様か冬春さんに小言を言われますよ」

「だから八尋ちゃんに言ったんじゃーん」

「まぁ俺はたまにはそういう話も有りかな、って思いますけどね。それよりどうします?近づいて来てますよ」

「うーん…これは忍?」

「みたいっすね。選択肢は?」

「逃げる、戦う、お茶をする」

「とりあえず最後のはないっすねー」

「じゃあ逃げつつ戦う!八尋ちゃん後ろ乗って、私方向分かんないから!」

「はい!飛ばしますよ!」



八尋は木の上から馬に乗る彼方の後ろに飛び乗って跨がると、手綱を取って勢いよく走らせた。
突然走りだした彼方を追うように、周りの気配もスピードを上げる。



「結構いるね…」

「なかなかの手練もいるみたいっす」

「じゃあとりあえず広い場所に出るまで逃げて、そこで戦う?」

「そっすね…って早速見えてきましたよ、拓けた場所」



前方に池が見えた。
池の周りには木はなく、戦うのに十分なスペースがあるようだった。

二人はそこまで白星を走らせた。
そして軽やかに降り立つと即座に武器を構える。
それと同時に、忍が周りから姿を現した。



「…毛利の利き駒とお見受けする」

「違いますけど」

「嘘を吐けども貴殿が利き駒だと調べはついている」

「じゃあ聞くなよって感じィ」

「「「………」」」

「いや…形式的な問いかけとして言わせてあげて下さいよ彼方さん」

「…利き駒、我らと来てもr 「やだ!」 ………」

「言わせてあげて?ねぇ彼方さん言わせてあげて?」

「ッ抵抗すればそこの忍共々酷い目n 「あァ?調子こいてんじゃねぇぞテメェら。俺と渡り合えるとでも思ってんのか雑魚共」 ……やれ」



要求に応じないどころか、なめきっているとしか思えない彼方たちの態度に痺れを切らした忍たち。
一斉に攻撃を仕掛けてきた。



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