才色飛車〜利き駒の調べ〜
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「幸村は恋してないの?」
「こ、恋…っ//そ、某はそのような…っ!」
「今まで一度も?」
「前田殿のようなことを言わないでくだされっ」
「あはは、まぁ幸村にもそのうちそういう時が来るよー」
「そ、そうでござろうか…?しかし某、こ、恋がどのようなものか分からぬ故…気付かないかもやしれませぬ…!」
「ふはっ、それはまずいよー!」
幸村の言葉に彼方は吹き出して笑った。
「えっと、恋するとね…その人のことが頭から離れなくなるんだよ。笑った顔とか怒った顔とか声とか…。それで…その人が関係してることは何でも楽しくなったり嬉しくなったり。けどちょっとしたことで悲しくなったりとか…胸がなんかもやもやするの」
「………(ま、さか…)」
「幸村?」
「………(それが恋というなら…まさか俺は…ッ)」
彼方殿に 恋をしている――…?
「どうしたの幸村」
「っ彼方殿…!」
一度自覚をしてしまえばもう否定できなかった。
幸村は不思議そうに見つめてくる彼方の顔を見ることもできない。
「幸村…もしかして思い当たる子でも…!?」
「っうおおおおお!!!//」
「Σうるせぇ!」
幸村は羞恥に耐え切れず叫びながら走って行った。
耳を押さえた彼方は幸村の消えた方を見てポカンとしていた。
その方角から「うるせぇぞ真田幸村ァ!」とか「静かにしねぇか!」と聞こえてきたのは気のせいではないだろう。
「…ホントに恋してたのかな」
「そうかもねー」
「Σぎゃああ!」
「しーっ」
「さ、佐助さん…」
いつの間にか後ろに立っていた佐助に驚いて叫ぶ。
「今日も眠れないの?」
「あ、ごめん…起こしちゃった…?」
「いやぁ旦那と大将の寝言で起こされ慣れてるし大丈夫。(てかずっと聞き耳立ててたし…)」
苦笑いしながら佐助は彼方の隣に腰を下ろした。
「でも政宗と小十郎さんも起きちゃったよね…」
「うーん、それは旦那のせいだし大丈夫じゃない?」
「そうかなぁ?」
「にしても旦那にもついに春が来たかぁ」
「相手は誰だろうねー」
「ねー…(気付いてないんだ…ってことは俺の想いにも気付いてないんだろうな…トホホ)」
「恋について話してやっと気付くなんて…幸村は鈍感だなぁ」
「Σ彼方ちゃんがそれ言っちゃう!?」
「え!?なんで?」
「あ、いや…彼方ちゃんも色恋沙汰には鈍感そうだなぁ…なんて?あはっ、あはは…」
俺様の気持ちに気付いてくれない彼方ちゃんも十分鈍感だろォ!?
そう言いたいところを誤魔化した佐助。
報われねぇよなぁ、と遠い目をした。
「いやいや、私結構敏感だよ!今もね…私に好意を寄せてくれてるんじゃないかなぁって思う人がいるんだ」
「えっ…?」
照れたような顔を向けられ、佐助は心の中で動揺した。
これはまさか…俺の気持ちに気付いてるのか…?
意識してくれてる…?
心臓が早鐘を打ち始めたのを感じながら、佐助は平静を装って続きを促した。
「ッへぇ…知りたいなぁ?」
「えへへ…ホントに?」
「うん…教えて」
「あのね、清水さんの小姓の宗介くん」
「(Σ誰ーっ!?誰だ宗介ーっ!!)」
佐助の期待は一瞬にして打ち砕かれた。
好意に気付いてもらえているその宗介とやらを殴ってやりたくなった程である。
「チラチラ見てくるし、めっちゃお茶持ってきてくれるし、すっごい話し掛けてくるし…八尋ちゃんと仲悪いし」
「え!?何その最後の基準!」
「うーん…前に聞いちゃったんだよね。『お付きの忍だからって彼方様に近づき過ぎだ!』とか『彼方様に何かしたら許さないからな!』とか…」
「(そりゃさすがに恋心にも気付くわ…)雀部はなんだって?」
「『うっせーな。ならアンタも彼方さん付きになればいいじゃねぇか。なれれば、だけどなハハハ!』」
「Σ酷ぇ!」
「以来二人は顔を合わせる度にピリピリしてて…そして冬春が巻き込まれる、と」
「柊野の旦那も苦労してるなぁ…」
佐助が冬春に同情していると、彼方があくびをしたことに気付いた。
「あれ、眠くなった?もう寝る?」
「…ん」
「じゃあおやすみ。ちゃんと布団掛けて寝るんだよ」
「ん。おやすみー…」
のそのそと部屋に入っていった彼方を見届け、佐助はため息を吐いた。
そして苦笑して夜空を見上げる。
「こりゃー一筋縄じゃいかねぇわ」
そう呟きを残し、彼の姿は闇と消えた。
真田主従 気付いても気付かれぬ
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あ、アホの集まりじゃないか…!^p^
次回ついに若草色のあの方が…ww
それはそうと質問なんですが、名前変換は一括でできた方が良いですか?
それとも今ままの一回ずつ変換する方が読みやすいですかね?