才色飛車〜利き駒の調べ〜
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瀬戸内
厳島付近にて
「ア、アニキーっ!先攻を切った俺らが逆に攻められてます!」
「隊のほとんどが破られましたーっ!」
「チィ…毛利の野郎!今日はやたらと攻めの戦をするじゃねぇか…!」
毛利軍と長曾我部軍は戦の渦中にあった。
毛利軍に奇襲を仕掛けたものの、現在劣勢…
長曾我部軍の頂点に立つ男、長曾我部元親は唇を噛んだ。
「畜生!毛利はどこだ!?俺が直接蹴りを着けてやるぜ!」
「そ、それがアニキ…!毛利の野郎は今回来てないらしいんすよ…!」
「あぁ!?来てねぇだぁ?ならどうしてウチがこんなに押されて…」
「報告します!毛利軍の指令及び統率は氷援隊隊長が行っている模様!主な戦闘も氷援隊のものです!」
「氷援隊隊長…まさか“利き駒”か!?」
ここ最近各国で噂になっている話だ。
――毛利元就の側近として最近働きだしたのは、高い知性と戦闘能力を併せ持った人物である…
毛利の側近が勤まるようなヤツが本当にいるのだろうかと疑ったものだが、隊を新しく作ったとまでなればあながち嘘ではないと言える。
そしていつの間にか「毛利の利き駒」と呼ばれるにまで至っているのだ。
「で?どんなヤツなんだ?その利き駒ってのはよォ。色んな噂があるが…。筋肉質の大女だとか、ひょろひょろの男だとか…南蛮から来た美少年、なんてのもあったな」
「それが…女でした」
「筋肉質の大女か!?」
「いえ、普通の女子です。変わった着物を着てはいましたが…少なくとも噂とは違う人物でした」
「なるほどな…。だが可愛い子分たちがやられてんだ。女だからって今回は容赦しねぇ…」
「でもアニキ!今のところ死人は出てないみたいっすよ!軽い怪我人ばかりで…。治療に来たやつの話によると意識のない奴らもみんな気絶してるだけだって…!」
「それを早く言えよ!野郎共は皆無事なのか!!?」
元親が声を荒げた瞬間、近くが騒がしくなった。
「進めーっ!」
「長曾我部元親はどこだーっ!!!」
毛利軍のものと思われる声が響きわたる。