才色飛車〜利き駒の調べ〜

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「来やがったか…!」



元親がそう言った瞬間、今までとは違った声が響いた。


「無理はするなよーっ!!!」

「彼方殿!もう少しですから頑張りましょう!」

「皆で帰るんだからねーっ!」

「おぉーっ!皆の者!彼方殿に続けーっ!」

「本陣はすぐそこだーっ!」

「後少し気張ってくぞーっ!!!!氷援隊進撃ーっ!」

「「「おぉぉーっ!!!」」」



戦場には不釣り合いな女の声。
そしてすぐに氷援隊の精鋭と思われる人間が何人か現れた。
その中には先ほどの声の人物であろう変わった服装の女の姿も見える。



「長曾我部元親さーん!どこですかーっ!」

「ここだ!」



女の呼び掛けに元親も姿を現した。



「お前だな…利き駒ってのはよォ」

「ききごま?」

「彼方殿のことですよ」



自分の通り名を知らなかった様子の女に、側にいた男がこっそり伝える。



「あ、はい、じゃあ私ですが。彼方と言います、はじめまして」

「じゃあってお前…知らなかったのかよ。まぁ良い」

「……………」

「怪我したくなかったら退きな、彼方チャンよ…」

「…ぶはぁ!」

「「「「Σ!!?」」」」

「な、なな名前呼ばれた…!てか良い体!元就さんにはない逞しい体!ちょちょちょ見て冬春!あの腹筋!腹筋割れてる!」

「彼方殿っ!女子がそのようなっ…」

「八尋ちゃん、私もう満足だよ…帰ろ?おんぶ」

「え、おんぶ?役得役得っ任せてくだ…じゃねぇ!彼方さん!落ち着いてくださいよ!元就様に怒られますってば!」

「はっ…そうだ…」




元親と長曾我部軍が呆気に取られて何もできずに見ていると彼方は深呼吸をして向き直った。



「お、おい…大丈夫なのか…?」



思わず元親が声をかけると彼方はゆっくりと口を開いた。



「今のは忘れてください」

「え?」

「それよりも何故貴方がここへ攻めて来たのか理由をお聞きしたいのですが。まさかこれが返事なんですか?」



さっきまでとはまるで違う様子の彼方に元親は混乱した。
突然変わる雰囲気…一体彼女は何なのだろうか、そんな疑問が頭を巡る。


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