才色飛車〜利き駒の調べ〜
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「ここなら見つからないですよ!」
「しっ、声がでけぇよ…!」
元就から逃げ回っていた二人は隙を見て鍛練場の床下に潜り込んだ。
「いくら元就さんでもこんな所に隠れてるとは思わないでしょう…」
「そうかぁ?てかお前女なのによくこんな所に入ろうと思ったな…虫とかいるんじゃ」
「あーこんなこともあろうかと、以前から八尋ちゃん達と綺麗にしてたので大丈夫ですよ。それに見つかったとしてもここまではこれませんよ。元就さんが地面を這うとは思えません」
「それはまた妙な努力を…。ま、来たら来たで貴重な姿が見れるな」
「恐怖刻まれますがね」
元就がほふく前進する姿を想像して、二人は笑いをこらえながら外の様子を伺っていた。
「けどよォ…元就のヤツ変わったな。すげぇ非情だったのに…」
「いやぁホントはあぁいう人なんですよ。非情ぶってただけです」
「非情ぶってたぁ…?」
「本当の自分を出して否定されるのが怖いんですよ。だから強がってたんじゃないんですかねー」
「………」
「確かに酷いことをしてきたけど…一番元就さん自身が傷ついてたんですよ、きっと」
「…確かにアイツ淋しそうだったもんなぁ…全部一人でやるって感じで…たまには誰かに頼ればいいのによぅ」
呟くように言った元親に、彼方は少し笑った。
「でもそれは元親さんだって一緒ですよ」
「何がだ?」
「たまには誰かに頼ればいいのに、ってことです」
ぽかんとした顔の元親にさらに続ける。
「元親さんってホントにアニキーって感じだから…。つい頼りたくなっちゃうっていうか…」
「まぁ俺自身も面倒見てやりたくなっちまうからなぁ」
「だから“アニキ”なんでしょうねぇ…。でもいつも“アニキ”でいる必要は無いと思いますよ」
「………?」
「たまには“アニキ”じゃなくて“元親さん”になって、元親さん自身のことを考えてもいいんじゃないかってことですよ。ずっと背負いっぱなしだと疲れちゃいますよ?」
「…変な女だな、お前」
元親の言葉に、へらりと笑っていた彼方は急に気まずそうに目線を伏せた。
「すいません、お喋りが過ぎましたね…。勝手なことばかり言ってしまって…」
「いや、かまわねぇ、嫌なわけじゃねぇんだ。むしろ有り難かったぜ、そんな風に言ってもらってよォ…」
「そう、ですか…?」
「あぁ…なんとなく自分がやってることが無意味に思える時があってよォ…。確かに背負い込みすぎだったのかもな。お前の言うとおり少しは俺自身のことを考えてもいいのかもしれねぇ」
元親は彼方の頭をぽんぽんと叩いた。
「ならいいんですけど…。なんだか元親さんにはつい色々喋っちゃいます」
「そーかそーか!」
「いつか私自身の話も聞いてくれますか?」
「あぁ…待ってるぜ」
良かった、と笑う彼方に元親も笑みを溢した。
「彼方…なんだか元就がお前を傍に置く気持ちが分かった気がするぜ」
「?はぁ」
曖昧な返事。
だが元親は気にせずまた笑った。
「それよりそろそろ出ても大丈夫なんじゃねぇか?」
「そうですねぇ。じゃあ出ますか」
床下から這い出た二人は太陽の光に目を細めた。
「眩しいなぁ!」
「こういう時こそ!…日輪よー!この幸せ…!」
彼方が元就の真似をして両手を広げ、その場でくるくる回る。
そんな姿に元親は思わず吹き出した。
「ぶっ…!はっはぁっ!似てる!似てるぜぇ!」
「我が輩は元就ナリ〜日輪の申し子ナリよ〜」
「ぎゃははははは!誰だよそれ!元就ナリーって…!アイツが実際に言ってたらさらに笑えるな!」
「あぁ…そうだな…」
「「……………………」」
ぴしりと固まる二人。
いつの間にか元就がすぐ近くに立っていたのだ。
「我をネタに…また随分と楽しそうではないか…フ、フフ」
「(やばっ!?)い、いやその、これはちょっとした冗談でー…」
「(キてる…!)そ、そうそう!」
「……参の星よ!我が紋よ!」
「「Σぎゃあああ!さっきよりやべぇぇ!!!」」
その後も必死に逃げ回る彼方と元親の姿が見られた。
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