才色飛車〜利き駒の調べ〜

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甲斐の地にて



「ぅお館様ぁ!」

「幸村ぁ!」

「ぅお館さンまぁあ!!」

「ぃゆきぶるぁ!!!」

「ちょっと!大将も旦那も大人しくしててくださいよ!お客さんが来るんですからね!」



師弟愛の賜物である殴り合い。
日常的な光景だが今日は止めてほしい、と佐助は一人ため息を吐いた。
今日は毛利軍から使者が来る。
そろそろ到着する頃の為部屋に待機しているのだが、信玄と幸村にはまるで関係ないようだ。



「お館様!お客人がご到着されました!」

「あー…いいよ、俺様が案内するから…」

「そ、それが佐助殿……」

「!なんだって〜!?」



到着の知らせにも反応しないほど燃え上がってしまった二人を放置して、佐助は訪問者の元へ向かった。



「毛利の旦那が来るとは予想外だね。驚いたよ」

「ふん」

「あ、佐助さん。すいませんねー、ホントは氷援隊の三人だけで来るはずだったんですけど。行くって聞かなくって」

「確かに驚いたけどね。ま、俺様は彼方ちゃんに会えただけで嬉しいからいいよー」

「えーホントですかー?」

「ホントホント!」



思わぬ人物が来たことに出迎えに出ていた兵は驚いていた。
毛利軍から使者が来るとは聞いていたが、まさか大将の毛利元就本人が来るとは思いもしなかったのだ。
しかもその横には変わった女の姿。
元就や佐助とも普通に会話する様子を見て、彼女が噂の“利き駒”なのだと誰もが確信に近い予想をした。



「いつぞやは彼方が世話になったな」

「やっぱバレてた?でも何もしてないよー」

「我が城に侵入しただけで十分よ」

「元就さーん、そんなこと言ってないで早くご挨拶に行かないと」

「いやー悪いね彼方ちゃん。じゃ案内するよ。…そろそろ落ち着いたと思うし」



どうか落ち着いて待っていますように、と佐助は心の中で祈っていた。
だがその願いはあっという間に砕け散ることになる。



「ぅおくぁたさばぁああ!!!!」

「ゆンきむるぁああ!!!!!」

「もーっ!いい加減にしなさい二人とも!毛利の旦那が来てますよ!!!」

「「う、うむ」」


まだ殴り合っていた二人に喝を入れた佐助。
やっと落ち着いて所定の位置に座った。
信玄の前には元就。
それぞれに幸村と武田の家臣数名、彼方と冬春が控えている。
佐助と八尋は天井裏へと移動した。

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