才色飛車〜利き駒の調べ〜
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甲斐への滞在
右を見れば。
「お館さまぁあ!!!」
「幸村ぁあ!!!」
「ぅお館さばぁああ!!!」
「ゆぅきむるぁああ!!!」
左を見れば。
「地を這うほど甲斐の土は心地良いようだな」
「っ元就さんが踏んでるか、ら…!そろそろ足退けてくださいよー…!」
「ほう、我に楯突くか。…仕置きが必要よ…」
「っ?ちょ、何…ぎゃーっ//」
同盟を結んでから数日。
毛利軍一行は武田の地に滞在していた。
「…なんなの?」
「いや、なにって言われても…」
佐助と八尋は屋根から主たちの行動を見ていた。
毎日変わらず殴り合う信玄と幸村。
殴り愛とはよく言ったものである。
そして苦しそうに元就を見上げる彼方と、薄ら笑いを浮かべて彼方を踏みつける元就。
さらに後者に至っては外にも関わらず堂々と服を脱がそうとし始めた。
「毛利の旦那と彼方ちゃんの関係だよ!…てか大丈夫なの?彼方ちゃん貞操の危機なんじゃ…」
「大丈夫さ。すぐに自分d 「何してんだコラァ!真っ昼間から盛ってんじゃねぇよ!全身緑の妖精のくせに!!オクラとでもヤってろ馬鹿が!」 …なんとかしたろ?」
「彼方ちゃん口悪っ!」
「まぁ…余程の時だけなんだけどな。でも元就様も懲りずによくやるぜ…」
隙を見て逃げ去った彼方の後ろ姿を落ち込んだ様子で見送っている元就。
だがその口元が「次こそは」と動いたことに気付いたのは忍の二人だけだった。
「…あのあからさまな好意の主張を彼方ちゃんはどう思ってんだろう」
「さぁな…。ま、主従以上恋人未満的な関係なんだよ。元就様は先走ってるけど」
「毛利の旦那も変わったもんだねぇ」
「構いたくなる気持ちも分かるしな」
「…雀部もよくやるよね。奥州まで行ったんでしょ?」
その節はやってくれたな、と黒い笑みを浮かべた八尋。
だがすぐに満足気な顔に変わった。
「彼方さんさ、俺が帰ってきてからしばらくはずっとくっ付いてたんだ」
「なにそれ自慢?」
「そうだ。八尋ちゃんがいなくて淋しかった、なんて服の裾を摘まれて言われてみ。元就様の気持ちも分かる」
「…確かに(なにそれ凄い可愛いんですけど。羨ましいんですけどぉー)」
ウチではそんなこと無いし、とやっと殴り合いを止めた上司に目をやりため息を吐いた佐助。
いくら忍と言えど彼も男。
華があればもっと頑張れそうなんだけどな、と内心考えていた。