才色飛車〜利き駒の調べ〜

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「お茶をお持ちいたしました」



そして美代がお茶を持ってきて、一人ずつ用意をする。
用意が終わり、毒味も済むと政宗は興味深そうに茶の香りを嗅いでいた。



「いいじゃねぇか。香り高い茶だな」



そう言ってお茶に口を付けた政宗を見て、家臣たちもお茶を飲み始めた。
だが一人お茶を見つめるだけで口を付けようとしない人物がいた。
先ほど不自然な反応をした人物だ。



「いかがでしょうか政宗様」

「さすが光右衛門だな。いいモン見つけてくるぜ。気に入った!なぁ小十郎」

「はっ。香りの割にとても飲みやすいですね」

「お代わりはいかがでしょうか」



美代が尋ねると政宗と小十郎、そして他にも何人かお代わりを頼んだ。
政宗から順にまたお茶を注いでいると例の家臣の後ろで美代は彼方に視線を向ける。
それに彼方が小さく頷くと美代は家臣にさりげなく問い掛けた。



「お代わりはいかがですか?」

「あ、いや…」

「あら、お飲みになっていらっしゃらないのですね」

「何?どうした孝之助、飲まねぇのか?」



美代と政宗の言葉に視線を泳がせる家臣、孝之助。
その様子に彼方は彼が犯人だと確信していた。



「もしや香りが苦手でございますか?」

「あ、あぁ実は…。せっかくなのに申し訳ない…」



彼方がかけた言葉に孝之助は顔を引きつらせながらもどこかほっとしたように言った。



「なに、苦手なら仕方ありますまい。のぅお梅」

「そうでございますよ。無理に飲むこともありませんわ」



それに、と彼方は続けて言った。



「自分が死んじゃったら元も子もないですもんね?孝之助さんとやら」

「なっ!?」



ガラリと雰囲気の変わった彼方に周りは動揺したが、本人は気にせずさらに続けた。



「政宗公に飲ませるはずだったものが自分の前に出てきてさぞや驚いたでしょうね。間違えんなよアホ女!とか思ってました?」

「き、貴様何を言っている!」

「何って…貴方が献上品に仕込ませた毒の話ですよ」



その言葉に小十郎が素早く動いたが、政宗がそれを制した。
彼方はそれを見てにこりと笑うと再び孝之助に話し始めた。



「毒味されても気付かれないように効き目の遅い毒薬を使うあたりが陰険ですよね」

「嘘を吐くな!某は何もしておらん!」

「やだなー、知ってるんですからね。貴方が遊女を使って毒を入れさせたこと」

「は、ははは!ボロを出したな!雇ったのは男たちで…!…っ!」

「ふ、あはは!ボロを出したのはそっちですよ!」



犯人しか知り得ないことをうっかり口を滑らせて言ってしまった孝之助。
もはや言い逃れはできない状況だった。

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