才色飛車〜利き駒の調べ〜
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奥州への滞在
「それで小十郎ってばさ!野菜を全滅させた芋虫を手で握り潰したんだよ!」
「怖ぇーっ!!あ、そういえば信玄公もカサカサ動く黒光りした虫を手で潰せるらしいよ!」
「そ、それってまさか…!ひぃい恐ろしーっ!」
「…何やってんだお前ら」
孝之助や森で縛られていたチンピラの自白、廃寺の遺体の状態などから、事件の真相は利き駒の言うとおりだった。
そんな暗殺未遂事件から一夜明けた日。
俺は見張りを付けた部屋にいる利き駒の様子を見に行った。
いくら暗殺を阻止したとは言っても敵軍の人間。
野放しにするわけにはいかねぇ。
だがあの部屋にいた誰もが利き駒に悪意は無いと根拠も無く確信していた。
光右衛門やお美代の頼みもあって、牢ではなく普通の部屋へ通すことにした。
昨日俺の腕の中で涙を流した利き駒。
きっと何をするでもなく部屋にいるんだろう…と思ったがこれは何なんだ!?
昨日の凛としつつも儚げだった利き駒はどこだ…!
「あ、政宗公」
「梵、仕事はいいのー?」
「いいんだよそんなん後で。つか何二人で妙な話をしてんだよ!」
見張りにつけた成実と利き駒はいつの間に仲良くなったのか、普通に会話をしていた。
「だって彼方ちゃんつまんなそうだったから。俺も暇だったし」
「…彼方?」
「あ、私です」
…なんだかやけにムカつく。
俺より成実の方が先に名前を知ってるってどういうことだよ!
「でも彼方ちゃん、実際虫を手で潰す男ってどう?」
「…ないね。蚊とかじゃないんだからさぁ」
「だよねー」
「…成実、もういい仕事に戻れ」
「えー」
「もーどーれ」
「はいはい。じゃーね彼方ちゃん」
「うん、バイバイなるみちゃん」
「なるみちゃん言うな!」
成実を“なるみ”と言ったことも気になったが、コイツ…