才色飛車〜利き駒の調べ〜
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「さて…彼方、だったか?」
「はい」
「その、なんだ…」
ちょこんと正座して見上げられると、なんだかこっちがいたたまれなくなった。
何なんだこの女は…。
子犬か?子犬なのか?
「どうして俺の暗殺を阻止した?」
「どうしてと言われても…。暗殺計画を知ったから、ですかね」
「それでわざわざ乗り込んできたのか?」
「あ、その…勝手に入り込んですいません」
「それは別にいいんだ。ただ…毛利軍のお前が何で俺を助けたのか気になってな」
俺がそう言うと利き駒は少し笑って言った。
「毛利軍のステレオタイプは一体どんな感じなんですかね。どこに行っても私は毛利軍の人間には見えないって言われますから」
「Stereotypeか。お前やっぱり異国語分かるんだな。さっきも成実に使ったろ」
「…政宗公発音いいんですねぇ。まぁ、はい、英語なら多少は分かりますよ」
「英語?」
「政宗公が使ってるのが英語です。HelloとかThank youとか。異国は異国でも様々な言葉を使ってるでしょう?」
「Oh,そうだな。お前他の言葉も分かるのか?」
「んー…GraciasとかBuon giornoとかなら聞いたことあるんじゃないですかね。スペイン…あ、イスパニアかな…?、とかイタリアって分かります?(史実の伊達政宗ってそこに派遣とかしたよね…?)」
「Yes!分かるぜ!」
「その辺の言葉なら単語くらいは少し分かりますよ」
コイツには本当に驚かされる。
一体何者なんだ?
「あーそれと…さっきの質問ですけど。あえて言うなら…Necessity knows no lawってとこですね」
「必要の前に法はない…。背に腹はかえられぬ、か。大事なことのためには他が犠牲になってやむを得ない…」
「はい。暗殺計画が実行されれば多くの犠牲が出る。それを思えば私が危険を押して犯人を発見すれば…少なくとも犠牲は私だけになります。今回は大事なことが暗殺計画。他の犠牲が私ですね」
「お前はそれでいいのか?自分を犠牲にして伊達軍を救うなんて…」
「いやぁ、そうは言っても私は別に犠牲になってないですしー。だから今回は犠牲無しですね」
毛利の刺客と思われてどんな仕打ちを受けるかとドキドキしてたんですけどー
普通に部屋まで与えてもらっちゃってありがとうございます
そう言ってへらりと笑った利き駒。
俺の気まで抜けちまうぜ…。