才色飛車〜利き駒の調べ〜

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帰国後



彼方ちゃんは奥州から帰ってくると、毛利の旦那と柊野の旦那からこってりと絞られてた。
でもだいぶ聞き流してたみたい。
明らかに目線が外の鳥を見てたよアレは。
まぁ毛利の旦那に甲斐に戻ってくる道中でも散々怒られたんだろうしね。
俺様たちに対しては本当にご迷惑をおかけしました…って謝ってきたけどさ。(彼方ちゃんのシュンとした姿って可愛い。ムフフ!)

そんなことがあった後、大将のいる躑躅ヶ崎館を離れ、本来旦那が守る上田城へ帰ってきた。
彼方ちゃんたちはこれを機に安芸に帰ってしまった。
それ以来なんだか旦那の元気がない。



「もー、どうしたのさ」

「彼方殿がいないと静かだな…」

「いや、旦那が静かだからだと思うけど」

「今はどの辺りにいるのだろうか…」



…これは。
旦那ってばもしかして…!



「ね、旦那。彼方ちゃんのこと考えるとどんな感じ?」

「心が暖かくなる…だがなんだか苦しいような気もする」

「…なるほどね」



やっと旦那にも春が来た!
と喜びたいところだけどさ。
俺様としては少し複雑。
相手が彼方ちゃんなんだもんな。
でも旦那が恋をしたのも彼方ちゃんだったからだ。
他の女の子だったなら今までと何も変わらなかっただろうし。



「佐助。彼方殿は不思議な女子だな」

「そうだね」

「彼方殿に男が甘味を好きではおかしいだろうかと何気なく言ったら…」

「言ったら?」

「なんで?と逆に聞き返されてしまった。そして甘味が好きな幸村が幸村なんだから、と」



彼方ちゃんらしい答えだと思う。
彼方ちゃんはありのままの自分を受け入れてくれる、そんな子だ。



「くっ…彼方殿の笑顔が離れぬ!」

「俺様は彼方ちゃんの首筋が好きだなー」

「なっ//破廉恥な!//」

「別に破廉恥ではないでしょ!旦那ってば何を考えてんのさ!」

「っうおぉぉぉ!//叱ってくだされお館様ぁああ!!!」



あちゃー…こりゃあ旦那が恋に気付くのも難しいかもね。
教えてもいいんだけど教えない。
旦那自身が気付くべきことだろうし…なによりなんか悔しいから。
恋敵が毛利の旦那だけだって大変なのにさぁ。
旦那も参戦してきたら余計に厄介だろ?
しかも俺様の予想では竜の旦那も落ちてると思うんだよね、うん確実に。



「いやぁ厄介だねぇ」

「何がだ?」

「ん?いやこっちの話!」



また会えるといいな。
きっと彼女は笑顔を向けてくれるから。
忍の俺にも変わらない笑顔を―…




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