才色飛車〜利き駒の調べ〜

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四国にて



「それでまつ姉ちゃんが怒っちゃってさー!」

「はっはっは!テメェらも懲りねぇなァ!」



ふらりとやって来た前田の風来坊、慶次。
自由気ままな性格のコイツ。
似たようなところもあるんだろうか、よく気が合う。
そんな慶次のくだらないが笑える前田家の話を聞いていると、突然話題を変え質問してきた。



「そういやさ!知ってるかい?」

「何をだよ」

「毛利の利き駒の話だよ!」

「あぁ…」



“利き駒”の噂は形は違えど至るところで聞く。
毛利元就の側近だなんてのは余程衝撃のある話なんだな…。
まぁ俺も当初は気になっていたもんだけどよ。
会ってからは噂は笑い話だぜ。



「そいつさ!逆立ちしながら生活してるって本当かな!?」

「ぶはっ!」



ま、また滑稽な噂が流れたもんだぜ…!
苦笑いする彼方の顔が浮かんだ。



「あー笑えるぜ!確かに変わったヤツだがそりゃあねぇだろうなァ!」

「え!元親会ったことあんの!?」

「おー。ほら毛利とは同盟結んだからよ」

「そっかそっか!にしてもよくあの毛利の兄さんが同盟なんて納得したなぁ」

「それも利き駒のおかげだぜ。アイツが説得したらしいからな」

「へぇー!凄いねぇ利き駒ってのは」



確かに凄いヤツだよな。
元就が側に置くくらいだし優秀だ。
気も効くし優しい。
それに色々と面白いし…その、なんだ、可愛いと思う…。
特別美人ってわけでもないんだがな。
可愛いんだよな…。
(彼方の笑顔と一緒に胸の柔らかさを思い出した)



「あれ、元親なんか顔赤くない?」

「き、気のせいだろ!」

「ふーん?」



火照る顔を誤魔化していると、急に外が賑やかになった。
海に出ていた野郎どもが帰ってきたみてぇだが…何かあったのか?



「怪我人でも出たのかもしれねぇ。慶次!ちょっと行ってくるぜ!」

「あ、俺も行くよ!」



急いで騒ぎの中心へと駆けつける。
一体何が…!



「どうした!!?」

「あっ、アニキ!姉御です!野郎どもの船に乗ってきました!」

「彼方!!?」

「なんか元気ないみたいっすよ。船に乗ってた奴らが励ましながらきたらしいんすけど…。まだあっちで話してますぜ」

「どうしたってんだぁ…?」



ヘラヘラ笑ってんのが彼方だと思ってた。
けどいきなり四国に来て、さらに元気がないとすれば…。
なんかあったんだな。



「アニキ!船に乗ってた奴です!」

「おう!彼方はどうだ」

「無理してるみたいっすよ…。姉御らしくないし…あ、来ますよ今」



視線を上げると、野郎どもに囲まれながらこっちへトボトボ向かって来る彼方が見えた。


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