才色飛車〜利き駒の調べ〜
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海の上で
猿飛に諭された後、彼方はすぐ元就に手紙を書いて鷹に運ばせた。
翌日にはすぐ元就たちからの返事が届いた。
雀部は普通の手紙で、謝罪と早く帰ってきて欲しいと言った内容だった。
柊野は何の報告書だ、ってくらい長い謝罪文で思わず笑ってしまった。
だが問題は元就だ。
手紙には一行。
『そなたであったから夢路を辿った』
俺には何のことだか分からなかったが、彼方は理解しているようだった。
その一行だけの文を読んで、困ったような…でもどこか嬉しそうな笑顔を見せた。
その意味を聞こうかと思ったが、なんだか聞きにくくてそのままになってしまっている。
「佐助さーん…これはドコを取ればいいんですかー…?」
「ほら、この…ココと、ココの糸だよ。内側から取って?」
「おーなるほど!よっ…できた!」
「じゃあまた俺様が取るねー」
……あ や と り 。
なにアイツら和やかに…!
船の上で綾取りってどうなんだよ!
…いいなぁ。
猿飛が彼方を送り届けると言っていたが、俺もまだ彼方と一緒にいたかった。
だから送り届けるということを名目に、中国までの船を出した。
だが彼方は猿飛とばかりいるような気がする。
…別に寂しくなんかねぇし。
「違うことして遊ぼっか?」
「はい!」
「彼方ちゃんは何したい?」
「んーなんだろ…」
「しりとりとかする?」
「しりとり!政宗ともやったんですよー」
「そうなの?あー奥州に行った時ね」
は?奥州?
なんだそれ知らねぇんだけど!
彼方は奥州に行ってたのか?
聞いてねぇぞ!
「奥州とか言ったらずんだ餅が食べたくなっちゃったなぁ」
「彼方ちゃん、ずんだ餅好きなの?」
「奥州で食べたらハマりました」
「へー旦那も食べるかなぁ」
「幸村ならなんでも食べるんじゃ…」
「あはー確かに!」
彼方がいつものように笑う。
ただその笑みを見せているのは俺じゃなくて猿飛だ。
「…ハッ」
しばらく一緒にいて、彼方のことを知れたと思っていた。
だがそんなのはほんの一部でしかなかった。
結局は…知らないことばっかだったんだな。
武田軍について話して笑いあう二人をこれ以上見ていられなくてその場を離れた。