才色飛車〜利き駒の調べ〜
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家出終了
彼方さんが帰ってくる。
俺はもちろん嬉しい。
冬春さんは彼方さんを心配してか、ソワソワと落ち着きがない。
毛利軍もなんだか浮き足だったような感じだ。
ただ元就様に至ってはよく分からない。
でもなんとなく海を見る回数が多いような気がする。
「元就様!長曽我部の船が見えました!」
家臣の一人が報告する。
どうやらやっと俺の居場所がお帰りになったようだ。
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「ほらーもうちょっとだよ彼方ちゃん…!」
「大丈夫かぁ…?」
「んー…」
船が着くと元就様と俺たちは彼方さんを迎えに行った。
だがどうだろう。
彼方さんは海賊兄さんに横抱きにされ、猿飛に頭を撫でられながら船を降りてきた。
元就様の周りの温度が下がった気がする。
「や、八尋殿…あれはまずいのではないか?」
「だよな…って元就様!?」
彼方さん達の元へ近づいていく元就様。
手にはいつのまにやら采配が握られている。
なんか嫌な予感がするよなぁ…。
「おぅ、元な…りィイイ!!?」
「ぎゃあぁ!」
「ちょっなんで俺様までーっ!!!」
予感的中。
元就様が采配を振るった。
見事に標的(海賊兄さんと猿飛)を打ち払った采配は、今は彼方さんを捕らえている。
あの包帯ぐるぐる状態のような状況を抜け出す気もないのだろうか。
彼方さんは動かない。
元就様はそんな彼女を思い切り引っ張り、そのまま腰を踏みつけた。
「こ、の!馬鹿者めが!」
「いだだだだ!」
「少々心配してやれば貴様…長曽我部などに抱かれてきおって!」
「ぐ…帰って早々に地に伏すことになるとは思いませんでした…」
「ふん…中国の地をその身で堪能するがよい」
「う゛ー…」
見慣れた光景…と言ってしまってもいいのだろうか。
元就様が彼方さんを踏みつける様子。
初めて見た時は驚いたものだが、今や日常茶飯事なので止めようともしない。
もちろん彼方さんが本気で抵抗しているなら助けに入るが。
俺は知っているんだ。
元就様が彼方さんを一番大切にしていることも、彼方さんが元就様に寄せる絶対的な信頼も。
だが今回ばかりはちょっと…
彼方さん青ざめてるし。
海賊兄さんと猿飛もなにやらおろおろしている。